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 第7話「未来を救え!泉の郷の仲間たち!」



 紡を捜していた舞達は、満、そして咲と合流した。

 その時、海上に上がる水飛沫を見たのだった。


 満「薫ーーーー!!!」


 舞「薫さん!!」


 咲「薫っ!!」


 フープ「薫~!」


 満達が紡と薫の下に駆け寄った。

 フェアリーリップの変身が解ける。

 しかし、紡は自分の両手に付いた薫の血を見たまま茫然自失の状態だった。


 満「薫っ!薫ーーー!!」


 リチウム「ひい、ふう、みい、よ、いつ…、なんだい!もしかして、プリキュアが全員集合かい!?」


 薫と紡の下に集まる満達をリチウムは煙管を使って数えた。


 リチウム「まあ、一人殺り損ねちまったみたいだけどねぇ」


 その時、紡を抱く様に寄りかかっていた薫が低い声を上げた。


 薫「うっ…」


 満「薫!」


 満の瞳は涙で溢れている。

 満は紡に寄りかかっている薫をそっと抱きかかえた。

 薫の頬を満の涙が打った。


 薫「…心配しないで…。私は…大丈夫…」


 咲と舞は零れ落ちる涙を拭って、リチウムを睨みつけた。

 その身体は怒りに震えている。


 咲「フラッピ!」


 舞「チョッピ!」


 その言葉にプラッピとチョッピがミックスコミューンに変身した。


 咲「私達の大切な友達を傷付けた…」


 舞「貴女を私達は絶対に…」


 咲舞「許さない!!」


 咲と舞がミックスコミューンを構える。


 リチウム「あ~ら、残念…。今日はここまでよ。今、プリキュアを倒しても何にもならないからねぇ…。あの人をちょっと焦らさなきゃね。アハハハハ…」


 咲「待ちなさい!」


 薫「ダメ…!さ…き…っ、ま…い…っ!」


 満に抱きかかえられている薫が消え入りそうな声で、咲と舞を止めた。


 満「薫!喋っちゃダメ!」


 咲「薫!」


 舞「薫さん!」


 咲と舞も再び薫の下に駆け寄った。

 薫はその言葉を最後に意識を失った。


 リチウム「それじゃあね…。アハハハハハハハ…」


 そう言うとリチウムは煙管で肩を叩きながら空間に出来た黒い穴の中に消えていった。

 その穴が消えるまで、リチウムの高笑いが最後まで響いていた。



 チョッピ「大丈夫チョピ。これなら精霊の力で治せるチョピ」


 リチウムが去った後、チョッピが薫の脇腹の傷口を見て言った。


 満「本当!?」


 舞「良かった…」


 咲達はチョッピの言葉に胸を撫で下ろした。


 フラッピ「ムープとフープも手伝うラピ!」


 ムープ「手伝うムプ!」


 フープ「薫を…、薫を助けるププ~!!」


 精霊達が薫の傷口に手を近付ける。


 フラッピ「緑の郷の精霊達、力を貸して欲しいラピ!」


 ムープ「力を貸して欲しいムプ!」


 チョッピ「薫を助けて欲しいチョピ!」


 フープ「薫を助けるププ~!!」


 大地から空から精霊の力が溢れる。

 そして、精霊の光が薫の傷口に集まっていった。

 すると、薫の傷口が徐々に塞がっていった。


 フラッピ「もう大丈夫ラピ…」


 咲「本当?」



 満「薫…」


 満がそっと薫に話しかける。


 舞「薫さん…」


 咲「薫…」


 フラッピ「薫…」


 チョッピ「薫…」


 ムープ「薫!」


 フープ「薫~!目を開けるププ~!!」


 紡「…」


 その声に応えたかの様に薫がゆっくりと目を開けた。


 薫「みんな…」


 咲「薫のバカ!バカ、バカ、バカ、バカ、バカっ!!」


 舞「もう、私達はあんな思いしたくない!」


 咲と舞は、ゴーヤーンとの戦いの後、消滅しかけた満と薫の姿と重ねていた。

 咲と舞の瞳から大粒の涙がボロボロ零れ落ちた。

 精霊達の目も涙で溢れてる。


 満「折角、咲が元気になったのに、貴女が死んでどうするのよ!」


 みんな泣いている。

 ただ、紡だけは泣いていなかった。

 嬉しくない訳ではない。

 自分のせいで、二度も薫を失う所だった。

 私には泣く資格さえない。

 ここにいる資格さえない。

 紡は、そう思っていた。


 それに気付いた薫がそっと紡の手を取る。

 そして紡の手をぎゅっと握り締めた。


 薫「私の手…、暖かいでしょ。これが命の暖かさ…。私は生きてるわ…」


 そして紡の腕を引き寄せ、紡を抱きしめた。

 紡は知っていた。

 この抱擁を。

 そう、それは未来で交わした最期の薫との抱擁だった。

 未来の記憶が蘇る。


 未来の薫「(貴女は私にとって大切な家族…、そしてたった一人の妹だったわ…。ありがとう…)」



 紡「かお…る…、おね…さ…」


 紡の瞳から堰を切った様に涙が溢れ出した。

 中学生の薫に高校生の紡が抱きしめられている光景だったが、咲達にはそれが姉に抱きしめられている妹の様に見えた。


 咲「(みのり…)」



 もう夕日は地平線に殆ど沈んでいた。


 紡「あのリチウムという怪人が未来で先生…、薫さんを…」


 薫「…」


 紡「私は博士から咲さんの救出とネオ・ダークフォールの打倒という使命を受けてきました…。あの未来を変える為に…。だけど…」


 紡が俯き、拳を強く握り締める。


 紡「だけど、私は薫先生の仇を打ちたかった!復讐したかった!あの時、助けてもらう事しか出来なかった自分が悔しかった!」


 紡の握り締めた拳が怒りに震える。


 紡「先生がいなくなっても、どんなに苦しいプログラムにも耐えた!強くなった!そう思ってた!」

 紡の身体から力が抜ける。

 紡「でも…」
 紡「また先生…、薫さんに助けられた…。ううん…。また薫さんの命を私が奪う所だった…。…私が…、私が先生を殺したんだっ!」


 紡はその場に力なく崩れ落ち、両手で泣き顔を隠した。


 咲「それは違うよ!」


 咲が崩れ落ちた紡の肩に手を置いた。

 しかし、紡は両手で泣き顔を隠したまま、首を何度も横に振る。


 紡「私が!私が先生を殺した!」


 咲や舞、精霊達もが紡の姿を見て、どう言葉を掛けていいか戸惑っていた。


 その時、それまで紡の話を黙って聞いていた薫が口を開いた。


 薫「そうね。確かに貴女のミスね」


 咲「薫!」


 舞「薫さん!」


 咲と舞が言葉を続けようとした時、満が手で咲と舞の言葉を遮った。


 薫は崩れ落ちている紡の前に片膝を着き、紡の手を取った。


 薫「でもね、それは未来の私のミスでもあった…。貴女に教えなかった…。ううん…、多分、教えてあげられなかった…」


 紡が涙に濡れた顔を上げた。


 薫「それは友達の大切さ…、友達との絆…」


 紡「絆…」


 薫「そう…。もう貴女は独りじゃない…。咲がいる…。舞がいる…。満がいる…」


 フラッピ「フラッピもいるラピ!」


 チョッピ「チョッピもいるチョピ」


 ムープ「ムープもいるムプ!」


 フープ「フープもいるププ!」


 薫「そして…、私がいる…。もう貴女は独りで背負わなくていいのよ…」


 咲「そうだよ!紡は私の命の恩人なんだから!」


 舞「私達は友達って言ったでしょ」


 満「そうよ!」


 フラッピ「フラッピも友達ラピ~!」


 チョッピ「チョッピも友達チョピ」


 ムープ「友達ムプ!」


 フープ「友達ププ~!」


 紡の瞳から再び大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。

 しかし、その表情は今まで見た事がない紡の笑顔だった。



 咲達が紡、薫と共に帰ろうとした時だった。

 再び空間に黒い穴が開いた。


 ?「プリキュア…。プリキュア~!!!!」


 舞達には聞き覚えがある声だ。

 その空間の穴から出てきたのは、あのイリジウムだった。


 イリジウム「プリキュアーーーーーー!!!」


 だが、その表情は以前のイリジウムとは違っていた。

 その目には狂気が宿っていた。

 一体彼に何があったのか。

 そこにいる誰もが、この後に起こるであろう激闘を覚悟した。


 咲「もう!次から次へと!」


 舞「薫さん、戦える!?」


 薫「もう、大丈夫よ!」


 満「紡は!?」


 紡「行けます!」


 咲「フラッピ!」


 舞「チョッピ!」


 満「ムープ!」


 薫「フープ!」


 その声に答えた精霊達がミックスコミューンに姿を変えた。

 紡も腰のポーチからピンクリップを取り出す。


 咲舞満薫「デュアル・スピリチュアル・パワー!」


 紡「フェアリーリップ・メイクアップ!」


 咲「花開け大地に!」


 舞「羽ばたけ空に!」


 満「未来を照らし!」


 薫「勇気を運べ!」


 咲「輝く金の花、キュアブルーム!」


 舞「煌く銀の翼、キュアキーグレット!」


 満「天空に満ちる月、キュアブライト!」


 薫「大地に薫る風、キュアウィンディ!」


 紡「自然と科学のコンダクター、フェアリーリップ!」


 咲舞満薫「プリキュア・スプラッシュスター!!!!」


 舞「聖なる泉を」


 薫「汚す者よ!」


 満「阿漕な真似は」


 咲「お止めなさい!」


 プリキュアとフェアリーリップがイリジウムと対峙する。


 イリジウム「プリキュア…、プリキュア~!!!」


 その瞬間、イリジウムの周りの空気が爆発した様な衝撃をブルーム達は感じた。

 そしてイリジウムは叫び声と共にプリキュア達に突進した。

 プリキュアとフェアリーリップはイリジウムの攻撃に備え、構える。


 イリジウム「プリキュアー!!!」


 イリジウムの一撃がプリキュアを襲う。

 繰り出されたパンチでイーグレットが吹き飛ぶ。


 舞「きゃー!」


 咲「イーグレット!」


 イーグレットの防御を無視するかの様な強烈な一撃だ。

 返す刀でブルームに裏拳が当たり、イーグレットとは反対側に吹き飛ばされた。


 満「ブルーム!」


 イリジウム「プリキュア…、プリキュアーーーー!!!!」


 イリジウムがブライトとウィンディに襲い掛かる。


 紡「土の精霊よ!」


 フェアリーリップの声で地面が盛り上がり、ブライト達の前に壁を作った。


 イリジウム「プリキュアーーー!!!」


 しかし、イリジウムの一撃で粉々に砕け散った。

 あのネオジムの一撃にさえ耐えた壁を一瞬にして砕いたのだ。


 紡「え!?」


 砕け散った壁の破片が地面に落ちる前にイリジウムの二撃目がブライトに襲い掛かる。


 満「は、早いっ!がっ!!!」


 ブライトは防御体制を取る時間さえなかった。


 薫「ブライト!うっ!?」


 ブライトのサポートに向かおうとしたウィンディの脇腹に痛みが走る。

 思わず脇腹を押さえる。


 紡「(先生…。やっぱり、さっきの傷が…)」


 紡「ブルーリップ・メイクアップ!」


 フェアリーリップがブルーリップを引く。


 紡「水の精霊よ!」


 海の水が龍を模って、ウィンディに向かっていたイリジウムに襲い掛かる。


 イリジウム「プリキュアーーー!!!」


 だが、その龍はイリジウムの払った腕からの衝撃波だけで、粉々に砕け散ってしまった。


 紡「そ、そんな…!?」


 そして脇腹を押さえているウィンディに向けて、イリジウムが拳を振り下ろした。


 紡「せんせーーーー!!!」


 その直前、イーグレットがウィンディの手を取り、イリジウムの拳からぎりぎりで救った。

 空振りしたイリジウムの拳が地面を穿つと、そこには巨大なクレーターが出来た。


 咲「こんの~!!!」


 ブルームがその隙に横からイリジウムの背中に向けてパンチを繰り出す。


 満「は~!!!」


 ブライトも上空の死角からブルームの攻撃に合わせて襲い掛かった。


 咲満「きゃ~!!」


 だが、その同時攻撃もイリジウムの片腕で払われてしまった。

 ブルームとブライトが、また同じ様に吹き飛ばされた。


 薫「強い…」


 舞「こんなに強かったの…」


 紡「ゴールドリップ・メイ…、がっ!!」


 フェアリーリップがゴールドリップを引こうとした時、イリジウムが瞬間移動した様な速さで近づき、フェアリーリップに一撃を加えた。

 その衝撃で、ゴールドリップがフェアリーリップの手から零れ落ちた。

 イリジウムは、そのままフェアリーリップに攻撃を加え続けた。

 フェアリーリップはガードしようとするが、その隙さえ与えてくれない連撃だった。


 イリジウム「プリキュ…アーーーーーー!!」


 紡「がっ!ぐっ!!がはっ!!!」


 薫「フェアリーリップ!」


 ウィンディとイーグレットがフェアリーリップを助けに向かう。


 薫「天空の風よ!」


 ウィンディから放たれた風の刃がイリジウムに襲い掛かる。

 イリジウムに当たったが、その身体に弾かれてしまった。


 舞「た~!!」


 その直後、イーグレットがイリジウムの脳天めがけて踵落としを繰り出した。

 直撃したイリジウムの動きが止まった。


 舞「よし!…えっ!?」


 イリジウムは何事もなかったかの様に自分の頭の上にあるイーグレットの足を掴んだ。

 そして棒でも振り回すかの様にイーグレットを振り回した。


 舞「きゃ~~~~~~~!!」


 薫「イーグレット!!」


 イリジウムからイーグレットを取り返そうと、ウィンディが向かった瞬間、イリジウムが手に持っていたイーグレットをウィンディに向けて放り投げた。


 舞薫「ああーーーーー!!」


 空中でぶつかったイーグレットとウィンディをブルームとブライトが受け止めた。


 咲「強い…!」


 満「強すぎる…!」


 舞「このままじゃ勝てない…」


 薫「一気にけりを付けましょ!」


 満「ウィンディ!」


 薫「ええ!」


 ブライトとウィンディがイリジウムに向かっていった。

 イリジウムはそれを気にもせず、再びフェアリーリップに攻撃を続ける。


 紡「ぐっ!!がっ!がはっ!!!」


 満薫「フェアリーリップ!!」


 二人のコンビネーションでイリジウムに向かうが、まるで歯が立たない。

 だが、ブライト達も諦めず、吹き飛ばされても、吹き飛ばされても、イリジウムに向かっていった。


 イリジウム「プリキュアアアアアアアアァァ!!」


 ブルームとイーグレットはブライト達の懸命の足止めの間、精霊の力を蓄えていた。

 ブルームとイーグレットは手を繋ぎ、目を瞑っている。

 二人の掲げた掌に精霊の力が集う。


 咲「大地の精霊よ」


 舞「大空の精霊よ」


 イリジウム「プリキュア~!!!」


 それに気付いたイリジウムがフェアリーリップへの攻撃を止め、ブルームとイーグレットに向かっていった。

 ブライトとウィンディはそれを阻止しようと攻撃を続けるが、イリジウムの足を止める事は出来なかった。


 咲舞「きゃーーーー!!」


 意識を集中していたブルームとイーグレットは、その無防備な状態をイリジウムに攻撃され、吹き飛んだ。


 満「ブルーム!」


 薫「イーグレット!」


 吹き飛ばされたブルーム、イーグレットの下に向かおうとするブライトとウィンディ。

 しかし、その前にイリジウムが立ちはだかる。


 イリジウム「プリキュア~!!!」


 満薫「ああーーーー!!」


 最初の一撃と同じ片腕の一往復でブライトとウィンディは吹き飛ばされた。

 イリジウムに吹き飛ばされたブライトとウィンディが地面と衝突し、土煙を上げた。


 フェアリーリップが、よろよろと立ち上がる。


 紡「強い…。強過ぎる…。伝説の戦士…プリキュアが…」


 呆然とするフェアリーリップ。

 彼女が未来で聞いていた伝説の戦士プリキュア。

 世界を救った無敵の戦士と聞いていた。

 だが、そのプリキュアがたった一人の幹部の前に倒されようとしている。

 フェアリーリップの心を絶望感が支配しようとしていた。


 イリジウム「プリキュア…」


 フェアリーリップが我に返った時には、既にイリジウムが目の前に立っていた。

 構える時間さえなかった。


 紡「あっ!」


 イリジウムの一撃でフェアリーリップは地面に叩きつけられた。

 フェアリーリップが目を開けると上からイリジウムの拳が迫ってくる。

 逃げようとするが、身体に力が入らない。


 紡「(先生…、お兄ちゃん…、ごめんなさい…)」


 イリジウム「プリキュア~~~~~~~~~!!!」


 イリジウムの止めの一撃がフェアリーリップに振り下ろされた。

 フェアリーリップは目を閉じた。





 キャスト

 日向咲(キュアブルーム)/声:樹元オリエ

 美翔舞(キュアイーグレット)/声:榎本温子

 霧生満(キュアブライト)/声:渕崎ゆり子

 霧生薫(キュアウィンディ)/声:岡村明美

 フラッピ/声:山口勝平

 チョッピ/声:松来未祐

 ムープ/声:渕崎ゆり子

 フープ/声:岡村明美

 紡(フェアリーリップ)/声:斎藤千和

 イリジウム77/声:小山力也

 リチウム3/声:喜多村英梨





 第8話「脅威の力!フェアリーリップ大変身!!」へ続く

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