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未来の世界で「運命の日」を呼ばれる日が遂に訪れた。
地上から高度2000km上空。
そこにベルセリウス重化学工業のロゴが入った人工衛星があった。
日付が変わったと同時に、その人工衛星から何かが射出された。
射出された物体は大気圏へと突入していく。
それは一つの人工衛星で起こった出来事ではなかった。
各大陸の上空に位置するベルセリウス重化学工業の人工衛星全てが同時に同じ行動を行っていたのだった。
紡「遂にこの日が…」
未来では、この日を「運命の日」、そしてネオ・ダークフォールの者は「断罪の日」と呼んだ。
その運命の日を告げる日の出を、紡は夕凪中学校から見つめていた。
腰のポーチにそっと手をやった。
紡「みんな、お願い…。もう少しだけ、私に力を貸して…」
皆既日食の前日、夕凪では日食を翌日に控え、町中が盛り上がっていた。
天気予報でも快晴が伝えられ、町の人々のテンションも最高潮であった。
咲の妹、みのりも日食観察用のサングラスを手に入れて、大はしゃぎだった。
だが、咲達はそんな気分ではなかった。
明日、ネオ・ダークフォールとの最終決戦を控えているのだ。
もし、この戦いに敗れれば、絶望と暗黒の未来しか待っていない。
しかし、ネオ・ダークフォールの幹部達との今までの激闘が、それが容易い事ではない事を伝えていた。
その日、咲達はソフトボール部の旧部室に集まっていた。
そこにいる誰もの表情が固かった。
咲「遂に…明日なんだね…」
紡「はい…。これが最後の戦いです」
舞「紡さんが来て2週間…。何だか、もう昔の話みたい…」
満「ほんと、色々あったわね…」
薫「未来の話もね…」
フラッピ「でも、明日で未来は変わるラピ!」
チョッピ「明るい未来が待ってるチョピ!」
ムープ「ムープも頑張るムプ!」
フープ「フープも負けないププ!」
咲が立ち上がる。
咲「そうだよ!まだ、戦ってもないんだから、こんな顔してちゃダメだよ!」
薫「そうね。今まで何度もみんなで逆境を乗り越えてきたんだから」
満「案ずるより、産むが易しってね」
舞「私達に出来る事をやりましょ!」
一同「お~!!!」
紡が真剣な眼差しで、口を開いた。
紡「では、みなさんに明日起こる事をお話します」
そこにいる全員の視線が紡に集まった。
紡「勿論、それはプリキュアがいない未来で起こった事ですので、全く同じ事が起こるかは分かりません…。ですが、聞いて下さい」
咲とフラッピが息を呑む。
紡「明日の正午から皆既日食がこの海原市夕凪一帯で起こります…。天気は快晴です…。ですが、日食が2/3程進んだ時…」
みんなの表情が強張る。
紡「ネオ・ダークフォールの怪人六人が、ある場所に降臨したと言われています…」
ムープとフープは満と薫の後ろに隠れて震えている。
舞「ある場所って?」
紡「それは、ネオ・ダークフォールが初めて現れた場所と同じです…」
舞と満、薫の顔が青ざめる。
満「え…!?」
薫「まさか…!」
咲「え?何?何?」
舞「ここ…、夕凪中学校…!」
紡が頷いた。
咲「え~~~~~~~~~~~~!!!?」
紡「何故、ネオ・ダークフォールが、この場所を選んだのかは分かりません…。ただ、この場所に拘っていたのは間違いありません…」
紡「それに当時、ネオ・ダークフォールの度重なる襲撃によって、中学校は閉鎖されていました…」
紡「そして、その直後、突然雲が空を覆い始め、雨が降り出したのです…。そして、日食が終わった後も、二度と太陽を見る事は出来なかったのです…」
ムープ「怖いムプ~」
フープ「学校が襲われるププ~」
咲「そんな事させない!」
舞「ここは私達にとって大切な場所…」
満「絶対に守ってみせる!」
薫「未来もね…」
紡「先生…。はい!」
咲がみんなの前に手を出す。
その手に舞が手を添える。
満や薫、紡、精霊達もそれに続く。
フラッピ「学校と未来は」
チョッピ「絶対に守るチョピ~!」
一同「おお~!!!」
咲「って、それは私が言おうとしてたのに~!」
みんなの顔に笑顔が戻った。
みのり「い~や~だ~!お姉ちゃん達と一緒に日食見るの~」
沙織「仕方ないでしょ。お姉ちゃん達は大事な用事があるって言ってるんだから」
運命の日の朝を迎えていた。
みのりが咲や薫達と日食を見たいと朝から駄々を捏ねていた。
大介「みのり、じゃあ、お父さんと見ようか!?」
みのりは大介をチラっと見た。
みのり「お姉ちゃん達とがいい!」
大介はガックリと肩を落とす。
咲「ゴメンね、みのり。お姉ちゃん、どうしても行かなきゃならないの」
みのりの目には涙が溜まっている。
沙織「じゃあ、お母さんと一緒に見ましょ」
みのり「ううう…。お姉ちゃんのバカ~!」
そう言うと二階への階段を駆け上がっていった。
沙織「みのり!もう…」
沙織が溜息をつく。
沙織「咲、今の内に行きなさい。みのりの事は大丈夫だから」
咲「ありがとう、お母さん…。じゃあ、行ってくるね」
そう言って咲は家を後にした。
咲「(みのり…、ゴメンね…)」
夕凪中学校には紡と舞達が既に集まっていた。
今日は日曜日という事もあり、学校での部活動は休みで、校庭や校舎にも生徒や教師の姿はなかった。
そこに遅れて、咲とフラッピが最後に到着した。
咲「はあ…!はあ…!みんな遅くなってゴメンね!」
紡「大丈夫ですよ、咲さん。まだ、時間はありますから」
咲が顔を上げると、舞達の表情が固くなっているのを感じた。
まだ見ぬ敵と最終決戦を前に満や薫さえも表情が強張っている様に見えた。
それを感じた咲が明るく喋り始めた。
咲「いや~。それにしても大変な夏休みだったよ~。アメリカ遠征から始まって、入院、そしてネオ・ダークフォールとの戦い…。でも、紡と出会えた」
紡「咲さん…」
咲「忘れられない中学最後の夏休みだったよ!」
そう言った後、咲の表情が曇る。
咲「だけど、宿題が全然終わってないんだよね~。って言うか、全然手を付けてないって言うか…。舞は?」
舞「う~ん…。私も最近遅れ気味かな…。自由研究の課題にも悩んじゃって」
咲「満は?」
満「私は全部終わらせたわよ。後は自由研究だけよ」
咲「マジで!薫も?」
薫「ええ。私も終わってないのは自由研究だけ」
咲「そんな~。私だけか~」
咲がガックリと肩を落とす。
ムープ「宿題って何ムプ?」
チョッピ「学校で勉強した事を家に帰ってもう一度確認する事チョピ」
フープ「何か楽しそうププ!」
咲「楽しい訳ないでしょ…」
咲が肩を落としたまま答えた。
フラッピ「咲は計画性がなさ過ぎラピ!」
咲「そ、そんな事、フラッピに言われなくても分かってるわよ!」
その咲がチラっと満と薫を見る。
咲「あの~、ものは相談なんだけど…、終わった宿題…、見せてもらっちゃダメ…かな?」
満と薫が呆れた表情で答える。
満「それじゃあ、咲の為にならないわよ」
薫「みのりちゃんだって、一人でやってるんだから」
咲「そう…だよね…。えへへへへ…」
舞「もう、咲ったら~」
フラッピ「ズルは駄目ラピ!」
チョッピ「咲はソフトボールで忙しかったチョピ」
咲「そう!そうなのよ!それなのに篠原先生が」
咲「選抜選手に選ばれたくても選ばれなかった選手がどれ位いると思う!その人達に選抜に選ばれたから宿題は出来ませんって言うのか!」
咲「って言うんだもん…。トホホ…」
舞「それは、先生の言う通りよ」
咲「それは分かってるけど~」
咲がいじけてみせる。
満「分かったわ。じゃあ、みんなで集まって咲の宿題を見ましょ」
咲「本当!」
咲の目がキラキラと輝き出した。
薫「でも、宿題をやるのは咲よ。私達は分からない所を教えるだけだから」
咲「全然オッケーだよ!これでやっと宿題の目処が付いたよ~!今日も絶好調ナリ~!」
舞「もう、咲ったら現金なんだから~」
咲「えへへへへ…」
紡「ふふふふ…」
フラッピ「はっ!空を見るラピ!」
フラッピの声に空を見上げると日食が始まっていた。
ムープ「太陽が食べられてるムプ~」
フープ「怖いププ~」
チョッピ「大丈夫チョピ。太陽が隠れんぼしてるだけチョピ」
咲「いよいよね…」
舞「これが最後の戦い…」
満「どんな敵が現れようと…」
薫「絶対に守ってみせる…」
紡の握った掌に汗が滲む。
紡「(遂に…、遂にこの時が来た…。先生…、お兄ちゃん…、私達を…、未来を守って…)」
日食が2/3が以上進んだ時だった。
フラッピとチョッピの耳が逆毛立った。
フラッピ「ラピ~!凄い嫌な気配がするラピ…」
チョッピ「今までとは比べ物にならないチョピ…」
その時、夕凪中学校の校庭の地面に黒い穴が開き、その穴から何者かが徐々に姿を現した。
姿こそ、ネオ・ダークフォールの怪人そのものだったが、今までの大男の様な体格でなく、まるで子供の様な姿だった。
その身長は咲達よりも小さいかも知れない。
だが、それが見た目だけである事を、滅びの力を感じる事が出来ない咲や舞でさえも感じていた。
咲が声を出そうとするが、その空気に呑まれ、声が出ない。
それは、かつてイリジウムがマーキュリーに感じたのと同じプレッシャーだった。
?「ほう…。その表情…。貴女達…プリキュアですね?フフフフフ…。私がネオ・ダークフォールのトップ、マーキュリー80(エイティ)です。宜しく…」
その声は外見と同様、子供の様な声だった。
紡「貴方がネオ・ダークフォールのトップね…。もう貴方の部下は一人もいないわ!もう、あんな計画は中止にしなさい!」
最初に声を上げたのは紡だった。
マーキュリー「ウフフ…。あんな計画とは?貴女…、まるで私が立てた計画を知ってる様な口ぶりですね。フフフフフ…」
咲「そんな事、どうでもいい!」
今までマーキュリーの醸し出す不気味なプレッシャーに呑まれていた咲達が紡に続く。
舞「滅びの雨なんて、絶対に降らさせない!」
マーキュリー「滅びの雨…。フフフフフ…、アハハハハ…!貴女達…、本当に知っている様ですね…」
マーキュリー「ですが、もう遅いです…。準備は全て整いました…。アハハハハ…!」
マーキュリーの発する言葉は大人の様に丁寧な言葉遣いだが、その喋り方はその外観と同じ子供そのままだ。
まるで、遊園地に行く事にはしゃいでいる子供の様なテンションだった。
その不自然さが、マーキュリーの不気味さを更に増幅させる様に感じた。
咲「そんな事はさせない!」
舞「私達の世界」
薫「私達の未来」
満「そしてこの星を」
紡「私達は絶対に」
咲舞満薫紡「守ってみせる!!!!!」
マーキュリー「アハハハハ…!威勢がいい人達ですね…。ですが、既にチェックメイトです。未来は変えれませんよ…」
紡「それはやってみなければ分からないわ!」
フラッピ「咲!舞!」
チョッピ「プリキュアに変身するチョピ!」
咲舞「うん!!」
満「薫!」
薫「ええ…。…紡、これが最後の戦いよ」
紡「はい…。先生!」
フラッピ、チョッピ、ムープ、フープがミックスコミューンに姿を変えた。
咲達がミックスコミューンを構える。
咲舞満薫「デュアル・スピリチュアル・パワー!」
紡も腰のポーチからピンクリップを取り出す。
紡「フェアリーリップ・メイクアップ!」
咲「花開け大地に!」
舞「羽ばたけ空に!」
満「未来を照らし!」
薫「勇気を運べ!」
咲「輝く金の花、キュアブルーム!」
舞「煌く銀の翼、キュアキーグレット!」
満「天空に満ちる月、キュアブライト!」
薫「大地に薫る風、キュアウィンディ!」
紡「自然と科学のコンダクター、フェアリーリップ!」
咲舞満薫「プリキュア・スプラッシュスター!」
舞「聖なる泉を」
薫「汚す者よ!」
満「阿漕な真似は」
咲「お止めなさい!」
マーキュリー「フフフフフ…。プリキュアに変身した所で何も変わりませんよ。チェックメイトと言ったでしょう…。アハハハハ…!」
その時、マーキュリーを中心に黒い渦が地面に浮かび上がった。
それは一見、台風の渦の様に見えるが、その色のせいか、まるでブラックホールの様にも見えた。
ブルームの腰に付いたミックスコミューンからフラッピが顔を出した。
フラッピ「ブルーム!ここは駄目ラピ~!!」
チョッピもミックスコミューンから顔を出す。
チョッピ「直ぐにここを離れるチョピ!」
咲「急にどうしたのよ!」
舞「ここを離れるって…」
ムープ、フープもそれに続く。
ムープ「ここは危険ムプ~!」
フープ「精霊の力が消えていくププ~!」
満「精霊の力が」
薫「消えていく…?」
紡「…。はっ!まさかっ!?みなさん、ここから離れて下さい!ここは危険です!」
咲「そんな事言ったって、アイツはどうすんのよ!」
舞「ブルーム!兎に角、チョッピやフェアリーリップの言う事を聞いて、一時離れましょ!」
満「そうね…。ムープ達の怯え方も普通じゃないわ」
薫「みんな!こっちよ!」
ウィンディを先頭にプリキュア達が校庭から校舎の屋上へと移動した。
マーキュリー「ハハハハハ…!懸命な判断ですね…」
マーキュリーは現れた場所、つまり校庭の中心から動こうとしない。
咲「フラッピ!どういう事!?」
フラッピ「あの場所は危険ラピ!」
チョッピ「精霊の力が吸い取られる感じがしたチョピ…」
その時、フェアリーリップが声を出した。
紡「私が説明します。あくまで私の予想なのですが…」
紡「あのマーキュリーが立っている場所は惑星直列の中心ではないのかと思うのです」
舞「惑星直列の中心?」
紡「はい…。今、惑星直列が起こっているのはご存知かと思います…」
満「ええ」
紡「太陽と太陽系の惑星が全て今、一列に並んでる状態です。つまり、太陽の力が一番地球に届きにくくなっている状態なのです」
薫「はっ!?もしかして…!?」
紡が頷いた。
紡「そうです…。皆既日食がこの町で見れるという事は、この町が地球上で最も太陽の力が弱まる場所…。つまり…」
舞「まさか…」
紡「最も滅びの力が強くなる場所なのです…」
咲「そんな…!じゃあ、アイツは今、何をしようとしてるの!?このまま手が出せないの!?」
紡が首を振る。
紡「私にもそこまでは分かりません…。ただ、彼が最も滅びの力が強まる場所、そしてこの時間に拘っていた事には間違いありません…」
満「それが分かって、何も出来ないなんて…」
薫「みんな!あれを見て!」
ウィンディが校庭に立つマーキュリーを指差した。
そこにはマーキュリーを中心に現れた巨大な黒い渦の様な力が地面から盛り上がっていた。
その黒い渦がマーキュリーを包み込み、やがて校庭を覆い尽くした。
マーキュリー「アハハハハハハ…!来ました!遂にこの時が来ました!私は神の真の力を手に入れるのです!!」
舞「神の…力…!?」
時間が立つにつれて、その渦は糸を縒る様に高く、そして濃くなってく。
その為か、一時は校庭全体を覆っていた黒い渦の面積は、小さくなっていた。
その分、黒い渦は細く、高く変化していく。
まるで黒い竜巻の様に変化していた。
竜巻の先端は空を突き抜けている様にも見えた。
フラッピ「今なら大丈夫ラピ!」
チョッピ「あの竜巻以外には滅びの力を感じないチョピ!」
咲「分かった!行くよ!みんな!」
舞満薫紡「ええ!!!!」
プリキュア達が校舎の屋上から飛び降りた。
満「あの竜巻に触れるのは危険よ!」
薫「ここは距離を取って攻撃するわ!フェアリーリップ!」
紡「はい!」
フェアリーリップはグリーンリップをポーチから取り出す。
紡「グリーンリップ、メイクアップ!」
黒い竜巻に向かって駆けて行くブライトとウィンディの両方の掌に月と風の精霊の力が集まる。
満「月の光よっ!はあっ!」
薫「天空の風よ!ふっ!」
ブライトとウィンディの掌から光弾と突風が黒い竜巻に向けて放たれる。
フェアリーリップ「木の精霊よ、力を貸して!」
校庭の脇に植えられている樹木から蔦が何本も黒い竜巻に向かって伸びる。
だが、ブライトとウィンディが放った光弾も突風も、そしてフェアリーリップが放った複数の蔦も竜巻に飲み込まれ、消えていった。
それは先にも感じた通り、光さえも飲み込んでしまうブラックホールの様だった。
満「そんな…」
咲「イーグレット!私達も!」
舞「ダメよ、ブルーム!あの竜巻…、何か嫌な予感がするの…」
咲「でも、このままじゃ…」
マーキュリー「フフフフフ…。騒がしいですね…。これから神が降臨しようとしてるのです…。跪きなさい!」
黒い竜巻の中からマーキュリーの声が響く。
その声と同時に黒い竜巻から複数の黒い雷(いかずち)が放たれる。
ブルーム達はその雷を避けようとするが、そのスピードは凄まじく、プリキュア達も避けきれない。
舞「きゃー!」
薫「ああー!」
一人、一人と、その黒い雷に撃たれ、そして倒れていく。
満「くっ!身体が…!」
黒い雷に撃たれたブルーム達の身体の自由が利かなくなっていた。
それは通電によるものだったが、リチウムから受けた放電による痺れとは比べ物にない程、強力だった。
手足の感覚が全くない。
マーキュリー「そうです。それが神を迎え入れる姿です…。崇め奉るのです!アハハハハ…!」
咲「誰が…アンタなんかを…!」
ブルームが倒れたまま叫んだ。
その間にも黒い竜巻はどんどん細くなっている。
最初、校庭を覆い尽くしていたその大きさは、今は直径は10メートル程まで細くなっていた。
薫「はっ!みんな!空を見て!」
紡「…!そんな…」
空を見ると、そこは黒い雲に覆われていた。
さっきまでは、日食で暗くなっているとは言え、雲は全く出ていなかった。
それはまるで、黒い竜巻が細くなるにつれ、雲が広がっている様だった。
その黒い雲は海原市を中心に地球上に広がっていく。
そして遂に。
ブルームの頬を雨粒が打った。
咲「え?」
舞「まさか…」
満「これが…」
薫「滅びの…雨…」
紡「くっ!このままじゃ…!このままじゃ…!!」
紡の脳裏に未来で起きた悲劇の場面が幾つも蘇る。
自由の利かない手足だけでなく、頭さえも支柱にして起き上がろうとする。
だが、上手くいくはずもなく、再び倒れこんだ。
薫「フェアリーリップ…」
ウィンディ達も必死に起き上がろうとする。
マーキュリー「アハハハハ…!何ですか!その姿は!まるでイモムシの様ですよ!アハハハハハ…!」
紡「笑いたけば笑えばいい…」
咲「それでも私達は」
舞満薫紡「絶対に諦めない!!!!」
プリキュア達がよろよろと立ち上がった。
だが、その足取りは覚束ない。
手足の感覚は、無理に動かしたのが逆に良かったのか、少しは戻っていた。
しかし、それでも立っているのがやっとの状態だった。
とても戦える状態ではなかった。
マーキュリー「フフフフフ…。あの攻撃を受けて立ち上がるとはね…。流石、伝説の戦士プリキュアという所ですか…。フフフ…」
黒い竜巻が更に小さくなった。
それと同時に雨脚も強くなる。
マーキュリー「時間です…。神の降臨に立ち会える事を光栄に思いなさい!アハハハハ…!」
黒い竜巻が全て空の雲の中へと消えていった。
だが、そこには何かが残っている。
それは人の形に見えた。
その姿を目にしたプリキュアが凍りつく。
それは子供の様な姿だったマーキュリーではなかった。
その身長は3メートルにもなる巨体で、上半身は巨大な筋肉に覆われ盛り上がり、頭には巨大な角が生えている。
白髪が腰まで伸び、臀部には足元まで届く程の長い尻尾が生えていた。
そう、プリキュアはこの存在を知っていた。
咲「そ、そんな…。生きてるはずない…」
舞「で、でも、あの姿は…」
満「それに…この強い滅びの力…」
薫「間違いない…あれは…」
咲舞満薫「ゴーヤーン!!!!」
ゴーヤーン。
ダークフォールの真の支配者。
圧倒的な力を誇り、滅びの力の根源と言える存在。
嘗てプリキュアと戦い、この宇宙を滅びる寸前まで追い込んだ最大の敵だった。
紡「あれが…ゴーヤーン…」
マーキュリーG「ゴーヤーン?知りませんね…。これは神の力!そして、この姿は神の象徴!」
マーキュリーG「私は…、私は遂に神の力を手に入れたのです!!アハハハハハハ…!」
その姿こそゴーヤーンだったが、その喋り方はマーキュリーのままだった。
だが、その声にはゴーヤーンの声が混じっていた。
まるで二人の人間が同時に喋っている様だった。
満「見た目はゴーヤーンの様だけど、中身はマーキュリーのままの様ね…」
薫「確かに、ゴーヤーンは滅びの力の根源…。それが、あの姿を象徴として現してるのかも知れない…」
咲「アイツがゴーヤーンだろうと、何だろうと関係ない!」
舞「私達にはやらなきゃならない事がある…!」
紡「太陽を…、そして未来を絶対に…」
咲舞満薫紡「取り戻してみせる!!!!!」
雨脚が更に強くなった。
プリキュア達とマーキュリーGが対峙する。
マーキュリーG「この神の姿を見ても尚、私に逆らおうとするとは…、哀れな…」
咲「ゴーヤーン!ううん!マーキュリー!アンタの力がどんなに強かろうと私達は負けない!」
マーキュリーG「フフフフフ…。それはどうでしょうか…」
するとマーキュリーGがプリキュア達の前から消えた。
舞「消えた!?」
だが、マーキュリーGは消えた訳ではなかった。
目にも留まらないスピードでプリキュア達の後ろに移動していたのだ。
マーキュリーG「ハァ~!!!!」
咲舞満薫紡「きゃ~!!」
マーキュリーGの一撃でプリキュア達は壁面を転がり落ちる小石の様に吹き飛ばされた。
まだ、その攻撃の勢いで止まってもいないプリキュア達に向け、マーキュリーGは黒い光弾を何発も打ち込む。
その爆発によって土煙が上がる。
土煙が晴れた跡には倒れたプリキュア達の姿があった。
紡「う…」
薫「くっ…」
起き上がろうとするが身体に力が入らない。
倒れているプリキュア達の前に、またもや猛スピードで間合いを詰めたマーキュリーGが立ちはだかる。
マーキュリーG「アハハハハ…!神の力…、思い知りましたか…」
咲「アンタなんかに…」
舞「絶対に負けない…」
マーキュリーG「…。いいでしょう…」
マーキュリーGが空高く飛び上がった。
そして合掌する様に手を合わせる。
その手が徐々に開いていくと、そこに黒い光弾が生まれた。
それを頭上まで振り上げると、数十メートルもの大きさになった。
マーキュリーG「アハハハハ…!神の慈悲です…。細胞の一欠けら残さず…、消えなさい!!」
咲「そうは…させない…!」
ブルームがよろよろと起き上がる。
イーグレット達がそれに続く。
舞「みんなが待ってるこの町を」
満「掛け替えのないこの世界を」
薫「そして未来を」
紡「私達は絶対に」
咲や舞の家族、学校の友人や恩師の姿、そして未来の薫と博士の姿が脳裏に浮かぶ。
咲舞満薫紡「守ってみせる!!!!!」
ブルームとイーグレット、ブライトとウィンディが手を繋ぎ、目を瞑る。
咲「大地の精霊よ」
舞「大空の精霊よ」
四人の掲げた掌に精霊の力が集う。
薫「精霊の光よ!命の輝きよ!」
満「希望へ導け!二つの心!」
舞「今、プリキュアと共に!」
咲「奇跡の力を解き放て!」
咲舞満薫「プリキュア」
咲舞「ツインストリーム」
満薫「スパイラルスター」
咲舞満薫「スプラーーーーーーーッシュ!!!!」
プリキュアから放たれた四色の光が渦となり、マーキュリーGが放った黒い巨大な光弾とぶつかり、鬩ぎ合う。
マーキュリーG「アハハハハ…!大した力ですね!流石、我が組織の幹部を倒しただけの事はあります…。ですが…」
ぶつかり合っている光と闇の力だが、徐々に闇の力が圧していく。
咲「フラッピ!どうしたの!?なんか力が抜けていくよ!」
フラッピ「…この雨のせいラピ…」
チョッピ「…この雨が精霊の力を奪ってるチョピ…」
舞「そん…な…」
薫「後…少し…」
満「なのに…力が…」
ムープ「もうダメム…プ…」
フープ「力が出ないプ…プ…」
フラッピ「ムープ!」
チョッピ「フープ!」
闇の力に圧され、プリキュア達は巨大な黒い光弾の爆発に飲み込まれた。
咲舞満薫紡「きゃ~!!」
その爆発により再び土煙が辺りを覆う。
土煙が晴れた後にあったのは、ボロボロになったブルームとイーグレットとフェアリーリップの姿、そして変身が解けた満と薫、ムープとフープだった。
咲「満!」
舞「薫さん!」
紡「ムープ!フープ!」
それに気付いたブルームとイーグレット、フェアリーリップが傷を押して満達の下に駆け寄る。
マーキュリーG「アハハハハ…。だから言ったでしょう…。神の力の前に貴女達の力等、赤子に等しい…」
空中に浮かび、ブルーム達を見下ろしていたマーキュリーGが地上に降りてきた。
マーキュリーG「神の力に逆らった事…」
そのマーキュリーGの手から黒いオーラが湧き上がる。
マーキュリーG「後悔しながら死になさい…。アハハハハハハ…!」
マーキュリーGの作り出した巨大な黒い光弾が、再びプリキュア達に向けて放たれた。
咲舞「くっ!!」
ブルームとイーグレットが精霊のバリアを張る。
その後ろでフェアリーリップはムープとフープを抱きかかえたまま、満と薫を庇っている。
マーキュリーG「フッ…。まだ抗おうというのですか…」
満「ブルーム…」
薫「イーグレット…」
マーキュリーG「なら…、これで終わりです!」
マーキュリーGの放つ黒いオーラの力が更に強くなった。
咲舞「うっ!!」
咲「イーグレット!」
舞「うん!」
ブルームとイーグレットが最後の力を振り絞る。
マーキュリーG「ハッ!」
だが、マーキュリーGの力に耐え切れず、遂に吹き飛ばされた。
咲舞満薫紡「きゃ~!!」
マーキュリーG「フフフフフ…。人間とは…しぶとい生き物ですね…」
マーキュリーGの攻撃によって、咲達は夕凪中学校の反対側の山、トリネコの森の斜面へ打ち付けられていた。
だが、マーキュリーGの攻撃により、木々は吹き飛ばされ、その一辺は荒野と化している。
ただ、その頂に大空の樹を残すのみだった。
その大空の樹も青々としていた葉が全て枯れ果てていた。
雨脚が更に強くなった。
満「うっ…」
薫「ここは…」
頬を打つ水滴に意識を取り戻した満と薫が、ゆっくり目を開けた。
それは大空の樹の枝から滴り落ちた雨粒だった。
大空の樹が、まるで二人を抱き抱える様に座していた。
生い茂っていた青々とした葉は全て枯れてはいるが、その葉に守られて大空の樹の根元には、まだ雨は殆ど届いていなかった。
満「大空の…樹…」
薫「葉が…枯れてる…」
その時、満と薫は自分達を庇う様に倒れている咲と舞に気付いた。
咲と舞も変身が解け、その傍らにはフラッピとチョッピが同じ様に倒れていた。
満「咲!フラッピ!」
薫「舞!チョッピ!」
だが、満と薫にも既に立ち上がる力は残されていなかった。
這いながら二人の下に辿り着いた。
満「二人とも…」
薫「私達の為に…」
満「はっ…!ムープ!?」
薫「フープ!」
満と薫が周りを見渡す。
紡「大丈夫…です…」
少し離れている場所に倒れていたフェアリーリップの胸元には、しっかりとムープとフープが抱きしめられていた。
ムープとフープは軽症の様だったが、力を使い果たし、ぐったりしていた。
薫「フェアリーリップ…」
しかし咲と舞は、まだ意識を取り戻していない。
満「咲…!咲!」
薫「舞!どうして…」
満と薫の瞳から零れ落ちた涙が咲と舞の頬を打った。
その時、咲と舞の目がゆっくりと開いた。
か細い声で答える。
咲「また会えなくなるのは…、絶対に嫌だよ…」
舞「もう…あんな思いは…したくない…」
咲と舞の脳裏にアクダイカーンの攻撃を庇って、光の中に消えていった満と薫の姿が浮かんだ。
そして、満と薫のいない教室で涙する自分達。
満と薫の瞳から涙がポロポロと零れ落ちていった。
そんな中、マーキュリーGの陰が一歩一歩確実に咲達の下に近付いてきていた。
滅びの雨より精霊が消え、静まり返った大地を雨音だけが響いていた。
キャスト
日向咲(キュアブルーム)/声:樹元オリエ
美翔舞(キュアイーグレット)/声:榎本温子
霧生満(キュアブライト)/声:渕崎ゆり子
霧生薫(キュアウィンディ)/声:岡村明美
フラッピ/声:山口勝平
チョッピ/声:松来未祐
ムープ/声:渕崎ゆり子
フープ/声:岡村明美
日向大介/声:楠見尚己
日向沙織/声:土井美加
日向みのり/声:斎藤彩夏
紡(フェアリーリップ)/声:斎藤千和
マーキュリー80/声:三瓶由布子
マーキュリーG/声:三瓶由布子・森川智之
最終話「絶好調ナリ!永遠の未来の仲間たち!」へ続く
  

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