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  第10話「遂に登場!最高幹部」 
 
 運命の日まで後5後日。
 
 オフィスの一角と思われる部屋。
 
  だが、そこは暗く、温かみも感じない空間だった。 
  その場所こそ、プリキュア達の敵、ネオ・ダークフォールの建物の中だった。 
  そこにイスに座る最高幹部「セシウム55(フィフティファイブ)」の姿があった。 
  卓上の書類に目を通している。 
 その時、オフィスの扉が開いた。
 
  そこに立っていたのはリチウムだった。 
 リチウム「セシウム様~」
 
 リチウムは相変わらず、セシウムの前では猫なで声だ。
 
  腰を振りながら、セシウムの部屋に入ってきた。 
  その態度が男性に受けるかどうかは別として、リチウムにとっては、これがセシウムに好かれるベストな選択だと信じていた。 
 セシウム「プリキュア抹殺に失敗した様だな…、リチウム…。成功率98%…。想定外だな…」
 
 セシウムは、目を通していた書類を机に置くと、立ち上がり、リチウムの下へと歩み寄った。
 
 リチウム「え~ん…、ごめんなさ~い…。だって、あのプリキュア、ずるいんですよ~」
 
 リチウムは泣き真似をしながら、セシウムに抱きついた。
 
 セシウム「そうか…。それは大変だったな…」
 
 そう言うとリチウムを左手で抱き寄せた。
 
 リチウム「セシウム…さ…ま…」
 
 リチウムはセシウムを見上げた。
 
  その表情は、人間だったら正に恋する乙女の表情だったであろう。 
  リチウムにとって至福の瞬間だった。 
 セシウム「だが…、失敗は償わなくてはならん…」
 
 リチウム「え?」
 
 リチウムの背中からセシウムの右手が見えた。
 
 リチウム「!!???セシ…ウ…さ…ま…」
 
 セシウムの右手がリチウムの胴体を貫いていた。
 
  セシウムがリチウムの身体を貫通していた右手を引き抜く。 
  リチウムは、よろよろと後ろに下がり、壁に寄りかかった。 
 セシウム「プリキュア抹殺はマーキュリー様からの勅命…。私には後が無いんだよ…。悪く思わないでくれ…」
 
 リチウム「セシ…ウム…様…。そん…な…」
 
 壁に寄りかかるリチウムにセシウムが一歩一歩、歩み寄る。
 
 セシウム「断罪の日は近い…。それを阻もうとするプリキュア…。断罪の日への準備はほぼ終わっている…。後はプリキュアの抹殺のみ…」
 
 リチウム「私は…、私は…今まで…貴方の…為…に…」
 
 セシウム「分かっている…。君には感謝しているよ…。お陰で、この組織の最高幹部になれた…」
 
 セシウムがリチウムの目の前に立った。
 
 セシウム「だが…、私の足を引っ張る様な輩は…」
 
 セシウムがリチウムに向かって右手を構えた。
 
 セシウム「不要なのだよ…」
 
 セシウムの手刀が再びリチウムの胴体を貫く。
 
 セシウム「何…!?」
 
 リチウムを貫いたと思ったセシウムの手刀が壁に突き刺さった。
 
  壁に寄りかかっているリチウムの姿が消えた。 
  セシウムが貫いたと思っていたのは、リチウムの残像だった。 
  ネオ・ダークフォール最速のスピードを誇るリチウムならではの芸当だった。 
 ?「ウヒャヒャヒャヒャ…!まんまと逃げられちまった様だな!え!?」
 
 そこにはいつの間にかセシウムの部屋の扉に寄りかかるカーボニウムの姿があった。
 
 セシウム「フッ…。そうだな…。だが、手応えはあった…。コアが傷付いてる以上…、もう長くは持つまい…。一日以上の生存率0%…。想定内だな…」
 
 カーボニウム「しっかし、自分を慕っている部下を手に掛けるなんて、アンタも酷いヤツだね~。ウヒャヒャヒャヒャ…」
 
 セシウム「我々はマーキュリー様に忠誠を誓った身…。彼女のミスでマーキュリー様からの信頼を失う訳にはいかないのだよ…」
 
 セシウムが握った拳に力を入れた。
 
 セシウム「断罪の日が近い今…、最大の障害となり得る存在…、プリキュア…。プリキュアを排除しない限り…、我々にも後がないのだ…!」
 
 カーボニウム「って事はいよいよ俺様の出番って事か!?え!?」
 
 セシウムがカーボニウムを手で静止する。
 
 セシウム「いや…。ここは私が行こう…。もうこれ以上…、プリキュアを野放しにする訳には行かないのでね…」
 
 カーボニウム「うひょ~!いよいよ、ネオ・ダークフォール最高幹部がお出ましですか!もうこれでプリキュアの命運も尽きたって事か!俺様も安泰!安泰ってね!」
 
 そう言うとカーボニウムは頭の後ろで手を組み、笑いながらセシウムの部屋を出て行った。
 
 セシウム「(折角、手に入れた不老不死の力…。そして最高幹部の地位…。…失う訳にはいかない…!)」
 
 
 
 その日は朝から小雨が降っていたが、今は止み、雲の隙間から日差しも差し始めていた。
 
 咲「いや~。カレーパンだけじゃなく、ハナミズタレまで仲間になってくれるなんて、想像もしてなかったナリ~」
 
 紡の腰のポーチから何か声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。
 
  咲達は、紡の仮住まいであるソフトボール部の旧部室に集まっていた。 
  病院からの度重なる脱走に病院側も辟易した様で、追い出される様に退院した。 
  大介や沙織も呆れ顔だったが、今の咲の元気な姿を見ていると、嘗ての不安は全くなくなっていた。 
 舞「本当ね」
 
 満「カレハーン達が元は精霊だったなんてね」
 
 咲がイスに寄りかかって溜息をつく。
 
 咲「それにしても、中学最後の夏休みってのに、全然遊んでないよ~」
 
 そう言うと咲は机に項垂れた。
 
 咲「楽しみだったアメリカ遠征も気付けばベットの上だし、宿題は溜まる一方だし…。トホホ…ナリ…」
 
 舞「そう言えば、咲がアメリカから帰ったら、みんなで海に泳ぎに行こうって言ってたんじゃない?」
 
 机に項垂れていた咲が飛び上がる。
 
 咲「そっか!入院とかでバタバタしてて、すっかり忘れてた!」
 
 満「ネオ・ダークフォールとの戦いもあったしね」
 
 舞「星野君の所の「ほしのや」は今年も盛況らしいわよ」
 
 咲「そりゃそうよ!だって、優子もアメリカ遠征から帰ってから、ず~っと手伝いに行ってるんだもん」
 
 ムープ「ムープもまた海に行きたいムプ~」
 
 フープ「カキ氷食べたいププ~」
 
 薫「でも…」
 
 薫が紡を窺う。
 
 薫「紡は海水浴場には行けないわよね?」
 
 紡「そうですね…。不特定多数の人が集まる場所は危険ですので」
 
 咲「じゃあ、夜に泳ぎに行こうよ!」
 
 舞「駄目よ、咲。夜の海は危ないわ」
 
 咲「え~!?」
 
 紡「私の事はいいですから、皆さんだけで行ってきて下さい」
 
 咲「そんなの駄目だよ!だって、紡も友達じゃない。紡だけ残して行けないよ」
 
 満「そうね」
 
 ムープ「海に行きたいムプ!」
 
 フープ「行きたいププ~」
 
 チョッピ「我儘言ったらだめチョピ」
 
 フラッピ「我慢するラピ!」
 
 それまで黙っていた薫が口を開いた。
 
 薫「満。あの場所なら人はいないんじゃないの?」
 
 満「…!そうね。広い場所じゃないけど、確か砂浜もあったわね」
 
 舞「薫さん、満さんは何処かいい場所知っているの?」
 
 満と薫が頷く。
 
 薫「ここからは結構歩くけど、ひょうたん岩の更に先に崖に囲まれた入り江があるの」
 
 満「森を抜けて行かないと辿り着けないから、まず人目には触れないはずだわ」
 
 咲「よ~っし!じゃあ、これから家に帰って水着の用意ね!今日はみんなで海水浴に決定~!」
 
 フラッピ「やったラピ~!海ラピ~!」
 
 ムープ「フラッピが一番はしゃいでるムプ!」
 
 フープ「フープ達の事言えないププ!」
 
 フラッピ「ラピ~」
 
 チョッピ「チョピ~」
 
 照れて頭をかいているフラッピを見て、チョッピが微笑んだ。
 
 舞「でも、紡さんは未来から水着なんて持ってきてないわよね?」
 
 紡「はい。流石に水着は…」
 
 咲「それは大丈夫!私に任せて!当てがあるから!」
 
 そう言って咲は胸を張った。
 
  しかし、その和やかな空気が一瞬で変わる。 
  フラッピとチョッピの毛が逆立つ。 
 フラッピ「嫌な気配がするラピ!」
 
 チョッピ「凄い力を感じるチョピ」
 
 咲「んも~!こんな時に!」
 
 舞「行きましょう!」
 
 舞の言葉にみんなが頷いた。
 
 
 
  町外れの雑木林。 
  そこに野球グラウンド程の開けた場所があった。 
 フラッピ「この辺りから強い滅びの力を感じるラピ…」
 
 チョッピ「今までとは比べ物にならない強さチョピ…」
 
 その場所に辿り着いた咲達は何か違和感を感じていた。
 
  その違和感が何かは、この時点では分からなかったが、それが不安を更に掻き立てた。 
 ?「現れたな…。プリキュア。やはり、我々の力を感じる事が出来る様だな…」
 
 そこにはネオ・ダークフォールの怪人の姿があった。
 
  その怪人は手に本らしき物を持ち、それに目を通している。 
  咲達には目もくれない。 
 ?「私の名はセシウム55(フィフティファイブ)…。ネオ・ダークフォールの最高幹部だ…」
 
 舞「最高…幹部…」
 
 咲「じゃあ、コイツを倒せば」
 
 セシウム「君がキュアブルーム…、君がキュアイーグレットだね…」
 
 セシウムが手に持っている本を開いたまま、視線だけを咲と舞に向けて言った。
 
 咲舞「え!?」
 
 セシウム「それに君がキュアブライト…、キュアウィンディ…。そして君が…、フェアリーリップか…」
 
 満「この男…!」
 
 薫「くっ!」
 
 紡「…!」
 
 セシウム「さあ…、変身するがいい…」
 
 今までの敵とは全く異なる雰囲気に咲達は完全に呑まれていた。
 
 フラッピ「咲!早くプリキュアに変身するラピ!」
 
 咲「わ、分かってる!行くよ!みんな!」
 
 舞達が頷いた。
 
 フラッピ達がミックスコミューンに姿を変えた。
 
  咲達がそのミックスコミューンを構える。 
 咲舞満薫「デュアル・スピリチュアル・パワー!」
 
 紡も腰のポーチからピンクリップを取り出す。
 
 紡「フェアリーリップ・メイクアップ!」
 
 咲「花開け大地に!」
 
 舞「羽ばたけ空に!」
 
 満「未来を照らし!」
 
 薫「勇気を運べ!」
 
 咲「輝く金の花、キュアブルーム!」
 
 舞「煌く銀の翼、キュアキーグレット!」
 
 満「天空に満ちる月、キュアブライト!」
 
 薫「大地に薫る風、キュアウィンディ!」
 
 紡「自然と科学のコンダクター、フェアリーリップ!」
 
 咲舞満薫「プリキュア・スプラッシュスター!」
 
 舞「聖なる泉を」
 
 薫「汚す者よ!」
 
 満「阿漕な真似は」
 
 咲「お止めなさい!」
 
 セシウム「さて…、全員揃ってもらった所で…、早速ここで全員自害してもらいたい…」
 
 咲「はぁ?アンタ一体何言ってるの!?」
 
 セシウム「残念だが君達の相手をしている時間は余りないのだよ…。私は結果が分かっている事に無駄な時間を使うのが嫌いでね…」
 
  セシウム「君達が私に勝てる確率は0%…。なら…、ここで自害してもらった方が時間の無駄にならないだろう…?」 
 満「な、何、馬鹿な事言ってるのよ!」
 
 舞「そうよ。そんな事、戦ってみなければ分からないわ」
 
 咲「イーグレット。こんな訳の分かんないヤツ相手にしてちゃ駄目。さっさと片付けて、みんなで海に行くんだから!」
 
 薫「ブルーム、待って。やっぱり、何かおかしいわ。確かに彼は今までとは何か違う…。何か分からないけど、違和感がするの…」
 
 紡「私もそう思います」
 
 咲「ウィンディ…」
 
 満「フェアリーリップ…」
 
 セシウム「人間は本当に愚かな生き物だ…。こんな簡単な事も理解出来ないとは…。仕方ありませんね…」
 
 セシウムが手に持っていた本を閉じる。
 
  その途端、途轍もない滅びの力が一帯を支配した。 
 咲「な!何なの!」
 
 舞「この人…、強い…」
 
 薫「それに、ここに来た時からする違和感…」
 
 満「イーグレット!ウィンディ!何、弱気になってるの!」
 
 咲「そうだよ!私達が力を合わせれば、どんな敵だって!」
 
 セシウム「話は終わったかね…?そちらが来ないなら…、こちらから行かせてもらおう…」
 
 そう言うとセシウムが飛び込んで来た。
 
  だが、そのスピードは決して速くない。 
  リチウムとの戦いを経験したからなのか、その動きはスローモーションの様にも感じた。 
  それが、ブルームとブライトに残っていた一抹の不安を吹き飛ばした。 
  ブルームとブライトがセシウムを迎え撃とうと前に出る。 
 咲「ブライト!」
 
 満「ええ!」
 
 その時、フェアリーリップの脳裏に声が響いた。
 
 紡「ブルーム!ブライト!彼に触れは駄目です!!」
 
 咲満「え!!?」
 
 ブルームとブライトがセシウムに飛び掛ろうとした瞬間、フェアリーリップの声に驚き、動きを止めた。
 
  だが、セシウムは既に二人の目前に迫っていた。 
 舞「ブルーム!」
 
 薫「ブライト!」
 
 イーグレットとウィンディがセシウムの攻撃が当たる寸前で、ブルームとブライトを救った。
 
  セシウムはその勢いのまま、プリキュア達の後方の雑木林に突っ込んだ。 
 その直後だった。
 
  セシウムに触れた木々が突然枯れ始め、砂に変わっていった。 
 咲「これは…!」
 
 満「そんな…!」
 
 セシウム「やれやれ…。早速二人片付けられると思っていたんだがね…」
 
  セシウム「キュアブルームとキュアブライトが現時点で生存している確率15%…。想定外だな…」 
 セシウムがプリキュア達のいる方向に振り向きながら答えた。
 
 薫「一体何が起きたの!?」
 
 フラッピ「精霊達が消えてるラピ!」
 
 フラッピがミックスコミューンから顔を出した。
 
 舞「え!?」
 
 チョッピ「さっきまで感じていた木の精霊の力を感じないチョピ!」
 
 セシウム「ハハハハハ…。やはり精霊はやっかいだな…。それに…、君の存在も…」
 
 セシウムがフェアリーリップに視線を送る。
 
 紡「…」
 
 セシウム「そう…、私の力は精霊を滅ぼす…。私の手に触れた生き物は全て砂となる…。私こそ…、ネオ・ダークフォール最強の矛なのだよ…」
 
 セシウムの両手に青白い炎が宿る。
 
 舞「あれは!?」
 
 満薫「…!!」
 
 セシウム「フェアリーリップ…、君が声を掛けなければ…、キュアブルームとキュアブライトは砂と消えていたんだがな…」
 
 セシウムは、そう言うと横にある大木に触れた。
 
  するとセシウムが触れた所から大木は砂に変わっていき、僅か数秒で木全体が砂となって崩れ落ちた。 
  その時、イーグレットが何かに気付いた。 
 舞「分かったわ…。さっきから感じてるこの違和感…」
 
 咲「何か分かったの!?」
 
 舞「この森…、静か過ぎるの…。森の中なのに、さっきから鳥の鳴き声も、虫の鳴き声も聞こえない…」
 
 紡「多分…、動物達はセシウムの力を素早く察したのではないでしょうか…」
 
 咲「何にせよ、あの両手を何とかしなきゃ、何も始まらないよ!」
 
 紡「でも、あの手に触れた途端、精霊の力は消え、砂となってしまいます」
 
 舞「一体どうすれば…」
 
 満「それなら、彼に触れずに戦えばいいのよ。ブライト!」
 
 薫「ええ。分かってるわ」
 
 ブライトとウィンディがリチウムに向かっていく。
 
  駆ける二人の両手に精霊の光が集まる。 
 満「月の光よっ!はあっ!」
 
 ブライトの手から光弾が放たれる。
 
 薫「天空の風よ!ふっ!!」
 
  それと同時にウィンディの手から風の刃が放たれた。 
  二人の同時攻撃がセシウムに襲い掛かった。 
 セシウム「フッ…。くすぐったいな…」
 
 満薫「え!?」
 
 セシウムは二人の攻撃を物ともせず、ブライトとウィンディに襲い掛ってきた。
 
 満薫「くっ!?」
 
 ブライトとウィンディは思わず、大袈裟にバックジャンプし、セシウムと距離を取った。
 
 咲「そんな…」
 
 舞「二人の攻撃が全く効かないなんて…」
 
 セシウム「ハハハハハ…。一つ教えてあげよう…。君達は私の最初の攻撃を避けたつもりだろうが、実は私の攻撃は当たっていたのだよ…」
 
 咲「そんなはずない!」
 
 満「そうよ!実際に何ともないじゃない!」
 
 セシウム「何故…、私が君達に手の内を見せたのか分からないのかね…?」
 
 薫「…!?まさか、それが狙いだったの!?」
 
 紡「くっ…!」
 
 咲「え!?え?え?何?」
 
 話の内容を理解出来ていないブルームが、ウィンディとフェアリーリップを交互に見た。
 
 セシウム「私があの一撃で君達に与えたのは肉体的ダメージではない…。それは…、心への攻撃だ…」
 
 咲「え…!?」
 
 セシウム「そう…。私の攻撃によって君達の心に恐怖心を植えつけたのだよ…」
 
 舞「そんな…」
 
 セシウム「実際、君達は私に近付こうともしないではないか…。そんな腰の引けた攻撃が私に効くと思っているのかな…?」
 
 満「そんな事はない!それなら!」
 
 薫「駄目よ!ブライト!これも彼の罠よ!」
 
 飛び掛ろうとするブライトをウィンディが制止した。
 
 紡「そうです!これは私達を彼に近付かせる為の挑発です!」
 
 満「くっ!」
 
 セシウム「ハハハハハ…。なかなか冷静な判断だ…。だが…、どうする…?このままでは私に勝つ事は出来ないぞ…」
 
  セシウム「これで分かっただろう…。もう諦めて自害したらどうだ…?」 
 舞「そんな事はしないし、私達は絶対に諦めない!」
 
 イーグレットの言葉に一同が頷いた。
 
 セシウム「だったらどうする…?…そうだな…。では…、君達が戦わないというのなら…、私がこのまま町に出てみるというのはどうかな…?」
 
 薫「そんな事したら…」
 
 満「町の人達が…」
 
 咲達の脳裏に家族や友人達の姿が浮かんだ。
 
 咲「アンタにそんな事はさせない!」
 
 舞「町のみんなは私達が」
 
 咲舞満薫「絶対に守ってみせる!!!!」
 
    プリキュアのその言葉に反応したかの様にフェアリーリップのポーチが黄色に輝き出した。 
 紡「これは…!?」
 
 フェアリーリップがポーチから黄色に輝くイエローリップを抜き出し、フェアリーエクストレに差し込んだ。
 
 その動きをセシウムが素早く察知した。
 
 セシウム「(ん?あれは…。!?いかん…っ!フェアリーリップがあのアイテムを使った後の幹部の敗北率は100%…!やらせる訳にはいかない…っ!)」
 
 セシウムが突然、フェアリーリップへ向かって飛び掛っていった。
 
 薫「フェアリーリップ!」
 
 紡「エレメント・スピリチュアル・パワー!」
 
 セシウム「やらせはせん…っ!」
 
 フェアリーリップはフェアリーエクストレをオーケストラの指揮者のタクトの様に振りかざす。
 
  すると、タクトの先から大量の小さな精霊の光が溢れ出した。 
  黄色に輝く精霊の光がタクトの動きに合わせ、フェアリーリップの身体を螺旋の光の帯が包み込んだ。 
  その時、襲い掛かるセシウムの拳とフェアリーリップを包み込む光の螺旋が激突した。 
  その刹那、爆発が起き、土煙が舞い上がり、辺りの視界を遮った。 
 咲舞満「フェアリーリップ!!!」
 
 薫「フェアリーリップーーーー!」
 
 セシウム「フハハハハ…!やったぞ…!まずは一人…」
 
 土煙の中からセシウムの声が聞こえた。
 
  だが、フェアリーリップの声は聞こえない。 
 咲舞満薫「フェアリーリップ!!!!」
 
 土煙によって遮られた視界が戻った時にプリキュア達が見たのは地面に落ちたフェアリーリップの頭だった。
 
  余りの出来事にプリキュアの動きが止まる。 
  まるで全員の心臓まで止まってしまったかの様だ。 
  イーグレットがショックの余り、気を失って倒れ込んだ。 
  それをブライトがぎりぎりで支えた。 
 セシウム「フッ…。無様だな…」
 
 ?「そうだ!そうだ!」
 
 セシウム「だが…、これがネオ・ダークフォールに逆らった者の末路なのだよ…」
 
 ?「そうだ!反省しろ!特に満と薫!」
 
 セシウム「これで少しは君達の立場が分かって貰えただろうか…?」
 
 ?「邪魔された事、僕ね、ずっと根に持ってたんだ~。僕はこう見えてナイーブなんだ…」
 
 セシウム「って、何者だ…!?先程からブツブツと…っ!?」
 
 何処かで聞いた事のある、か細い声が何処かから聞こえている。
 
  だが、その声の主が何処にいるのかが分からない。 
  セシウムが辺りをキョロキョロと見回す。その間も何処からかブツブツと小声が聞こえているが、その姿を見つけ出す事が出来ない。
 
  セシウムの表情には焦りすら伺えて見えた。 
 セシウム「何処にいる…!姿を現したらどうだ…!」
 
 ?「ムププププ…。まだ、誰も気付いていないんだ。やっぱ、ぼっくの立てた作戦はすっごいよな~。ムププププ…」
 
 その時、ブライトの腕の中で気を失っていたイーグレットの目がゆっくりと開いた。
 
  だが、震える指でセシウムの足元にあるフェアリーリップの首を指差して、再び気を失った。 
  何と、フェアリーリップの首が笑っているではないか。 
  先程のからの声の主はフェアリーリップの首だったのだ。 
  それに気付いたセシウムも思わず、フェアリーリップの首から距離を取った。 
 セシウム「フェアリーリップ…。き、貴様、不死身か…!?…首のみとなったフェアリーリップが喋る確率0%…!想定外だ…!」
 
 咲満薫「フェアリーリップ!!!」
 
 ?「プププププ…。フェアリーリップだって。まだ、僕の事が分からないんだ。やっぱ、プリキュアも大した事ないよな…。ムフフフフ…」
 
 満「そ、その声は…」
 
 薫「まさか…」
 
 咲満薫「ドロドロン!!!」
 
 ドロドロン「そっおおで~す!ドロドロンでっす!…今頃気付いた?」
 
 ブルーム達の声に気を失っていたイーグレットが再びゆっくりと目を開いた。
 
 舞「…え?ドロドロン…?」
 
 ドロドロン「とぉーっ!」
 
 その掛け声と共にドロドロンが地中から飛び出し、姿を現した。
 
 リチウム「その目の色…、コスチュームの変化…、そしてその声…。フェアリーリップではない確率89%…。貴様…、何者だ…!?」
 
 ドロドロン「え…?さっきから、ドロドロンって言ってるじゃないか…、もう…。何度も同じ事言わせるなよな…」
 
 相変わらず小声で喋っており、何を喋っているのか、よく聞き取れない。
 
 舞「フェアリーリップ…、無事だったのね…」
 
 紡「(みなさん、ご心配掛けしました。私は大丈夫です。セシウムとの激突で、気を失ってたみたいです…)」
 
 薫「フェアリーリップ…、良かった…」
 
 ウィンディが安堵の余り、膝を着いた。
 
 紡「(先生…)」
 
 ブルーム達が瞳に溜まっていた涙を拭う。
 
 咲「って言うか、ドロドロン!フェアリーリップになんて事すんのよ!」
 
 満「ドロドロン…、貴方も…」
 
 ドロドロン「そっおで~す!僕は土の守護精霊!緑の郷を守る為に頑張りまっす!」
 
 それまで様子を窺っていたセシウムが動き出す。
 
 セシウム「フッ…。フェアリーリップの中身が変わったとしても…、今の私の圧倒的な優位に変わりはない…」
 
 ドロドロン「フフ~ン。それはどっかな~?今日はすっごい作戦がいくつもあるんだからな~!まずは…、これだ~!」
 
 その声と共に地面が盛り上がり、幾つもの巨大な泥団子が飛び出して来た。
 
  それが天高く舞い上がったと思ったら、巨大な雹の様に地上に降り注いだ。 
  ブルーム達が必死にそれを避ける。 
 咲「ちょっ!ちょっと!ドロドロン!こっちにも来てるじゃない!」
 
 ドロドロン「そんな細かい制御はでっきませ~ん」
 
 満「アンタ…、ワザとやってるんじゃないでしょうね…!?」
 
 ブライトの鋭い眼光がドロドロンに向けられると、口笛を吹きながら目を逸らした。
 
  セシウムが片手を空に向ける。 
  セシウム目掛けて落ちてきた巨大な泥団子がセシウムの手に触れると、瞬く間に砂へ変わり消えていった。 
 セシウム「フン…。これが何だと言うのだ…。下らん…!」
 
 ドロドロン「感じ悪~!」
 
 するとドロドロンの身体に泥が集まり始めた。
 
 ドロドロン「吸うよ!どんどんどんどん、吸っちゃうよ~!」
 
 いつの間にか、ドロドロンを核とした巨大な泥団子が出来上がった。
 
 ドロドロン「な、な~な、な~な、な~な、な~♪」
 
 ドロドロンの鼻歌が泥団子の中から聞こえてくる。
 
  そして、その巨大な泥団子が高速回転しながらセシウムに向かって行った。 
 セシウム「何をやろうと同じ事だ…」
 
 巨大な泥団子がセシウムの片手に触れた途端、真っ二つに分断され、左右に分かれた。
 
 ドロドロン「うわ!あっぶなっ」
 
 今度は割れた片方の泥団子が形を変えていった。
 
  それは徐々に人型を形成し、巨大なドロドロン(外見はフェアリーリップ)に姿を変えた。 
 ドロドロン「はい!ビックドロドロンでっす!」
 
 巨大化したドロドロンが拳を振り上げる。
 
 ドロドロン「はいっ!」
 
 ドロドロンの巨大な拳がセシウムに振り下ろされた。
 
 セシウム「無駄だと言っている…!」
 
 その巨大な拳でさえも、セシウムの手に触れると砂となり、消えていった。
 
 ドロドロン「ムフ。引っかかったね…」
 
 二つに割られた泥団子のもう片方の塊からドロドロンが姿を現した。
 
 セシウム「何だと…!?」
 
 セシウムが足元を見ると、セシウムの足が地面の中に沈んでいた。
 
  それはまるで底なし沼の様にセシウムを飲み込んでいく。 
 セシウム「ちぃっ!」
 
 セシウムは直ぐに飛び出そうとする。
 
 ドロドロン「はい!残念!」
 
 ドロドロンの声と共に今まで底なし沼の様に柔らかかった地面が元の硬い地面に戻った。
 
  その時点で、セシウムの身体は既に半分が地面に埋もれている状態だった。 
 セシウム「フン…!こんなもの、直ぐに砂に変えてやる…!」
 
 そう言うとセシウムは、両手を地面に当てた。
 
  セシウムの手に触れた部分がどんどん砂に変わっていく。 
 ドロドロン「ふっふっふん。それで間に合うかな~?プリキュア~!」
 
 セシウム「何っ!!?」
 
 セシウムの視線の先には手を繋ぎ、精霊の力を集めているブライトとウィンディの姿があった。
 
  しかし、この絶体絶命の窮地に陥っても、セシウムからは焦りが全く感じられない。 
  それ所か、精霊の力を集めているブライトとウィンディの姿を見て、不適な笑みを浮かべた。 
 セシウム「フフフフフ…。ハハハハハ…!」
 
 ドロドロン「え?え?え?あれ?な、何が可笑しいの?」
 
 セシウム「この状況になる確率30%…。想定内だ…。奥の手とは最後まで取っておくものだよ…」
 
 するとセシウムの埋まっていた下半身の周りの土が砂に変わった。
 
 ドロドロン「ホワイ!?」
 
 舞「まさか!?」
 
 咲「手じゃなくても!?」
 
 セシウム「この瞬間を待っていた…!プリキュアが最も無防備になる瞬間を…!!」
 
 セシウムが埋まっていた地面から飛び出し、ブライトとウィンディに向かっていった。
 
 セシウム「プリキュアの必殺技…。不死身である我々の身体を消し去る力…。確かに脅威だ…。だが…」
 
 セシウムがブライトとウィンディの下にどんどん迫り来る。
 
 セシウム「技を発動するまでの時間…、約数秒…。その間は完全に…、無防備となる…!!」
 
 ドロドロン「プリキュア~!」
 
 ドロドロンの声と共にセシウムの目の前に土の壁が何枚も立ち塞がる。
 
 セシウム「ハハハハハ…。無駄だと言っているだろう…!この程度の障壁…!」
 
 セシウムが両手を前に翳すと土の壁はみるみると砂に変わっていった。
 
  そして、遂にはブライトとウィンディの目の前に迫った。 
 咲「ブライト!」
 
 舞「ウィンディ!」
 
 ブルームとイーグレットがブライトとウィンディの目の前に立ちはだかり、精霊のバリアを張った。
 
 満「ブルーム!」
 
 薫「イーグレット!」
 
 セシウム「死ね~!!」
 
 ブルームとイーグレットの張った精霊のバリアとセシウムの両手が激突した。
 
  その衝撃により、ブルーム達を中心に光と爆風が起こった。 
 咲舞「きゃ~!!」
 
 セシウム「ちぃっ!」
 
 ドロドロン「プリキュア~!」
 
    土煙が晴れた跡には倒れている咲と舞、フラッピとチョッピ、そこに佇むセシウムの姿があった。 
  咲と舞の変身は解け、普段の姿に戻っていた。 
 満「咲!フラッピ!」
 
 薫「舞!チョッピ!」
 
 ブライトとウィンディが倒れている咲達の下に駆け寄った。
 
 咲「う…、う~ん…」
 
 ブライトとウィンディが咲と舞を抱き起こす。
 
 舞「わ…、私達…、生きてる…の…?」
 
 満「当たり前じゃない!」
 
 薫「あんな無茶を…」
 
 咲「いや~、身体が勝手に動いちゃって…。あれ…、元に戻ってる…。!?フラッピは!?」
 
 舞「チョッピ!」
 
 咲と舞が倒れて、ぐったりしているフラッピとチョッピに気付いた。
 
 咲「フラッピ!」
 
 舞「チョッピ!しっかりして!」
 
 フラッピ「大丈夫ラピ…。でも、ちょっと疲れたラピ…」
 
 チョッピ「精霊の力を使い果たしたチョピ…」
 
 咲「フラッピ!」
 
 舞「チョッピ!」
 
 フラッピ「大丈夫ラピ…」
 
 チョッピ「少し休むチョピ…」
 
 咲と舞の瞳から涙が零れ落ちる。
 
 咲「フラッピ…、ゴメン…」
 
 舞「チョッピ…、無理させちゃったね…」
 
 満「フラッピ…」
 
 薫「チョッピ…」
 
 セシウムが自らの両腕を見ている。
 
  その両腕はプリキュアとの衝突の衝撃で震えていた。 
 セシウム「(プリキュアの力…、想定外だ…!やはり侮れん…。一時退くか…。…。いや…、私にも後がない…!)」
 
 セシウムが咲と舞、ブライトとウィンディに視線を送る。
 
 セシウム「さあ、どうしたプリキュア…。もう終わりか…?次はない…!これで…、終わりだーーーーーー!!!」
 
 セシウムの両腕から青白い炎が燃え上がった。
 
  咲と舞を背にブライトとウィンディがセシウムの前に立ち塞がる。 
 満「咲と舞!」
 
 薫「フラッピとチョッピは!」
 
 満薫「絶対に守ってみせる!!」
 
 
 咲達とは少し離れた場所にドロドロンは立ち尽くしていた。
 
 ドロドロン「プリキュア…」
 
 紡「(ドロドロン…。元の姿に戻って下さい…。私が…、私がセシウムを止めます)」
 
 ドロドロン「駄目だよぅ!そんな事したら、紡は死んじゃうんだよ?」
 
 紡「(でも、それしか方法はありません…。プリキュアは最後の希望…。それに…、未来が救われても…、私は…)」
 
 ドロドロン「紡…。…。分かったよ…。でも…、僕も一緒だよ!だって…、だって、紡は…!紡は…僕の大切な…友達…だから…」
 
 紡「(ドロドロン…。ありがとう…。…行きましょう)」
 
 ドロドロンがセシウムに向かおうとした時だった。
 
 ?「それはアンタの役目じゃないよ…」
 
 何者かがドロドロンの肩に手を置いた。
 
 紡「(貴女は!?)」
 
 それはリチウムだった。
 
 ドロドロンは思わず距離を取り、構えた。
 
 ドロドロン「な!?何だよ~。や、やる気か~?」
 
 そう言いながら、ドロドロンが弱々しくシャドーボクシングの真似をした。
 
 
 
  だが、リチウムの身体の一部は既に崩れ始めていた。 
  それは、イリジウムが倒れた時と同じ状態だった。 
 紡「(…。まさか…!?ドロドロン、お願い…)」
 
 ドロドロン「え?もう…、分かったよぉ」
 
 フェアリーリップが元の姿に戻った。
 
  リチウムがフェアリーリップと視線を交わす。 
  二人の間に言葉は全く無かった。 
  そして、リチウムはフェアリーリップの前から姿を消した。 
 
 セシウム「フハハハハ…。守ると言っておきながら逃げてばかりではないか…」
 セシウム「だが…、足手まとい人間と精霊を守りながらでは…、もう限界の様だな…」
 
 ブライトとウィンディは咲と舞を抱えながら、セシウムの攻撃から逃れていた。
 
  咲と舞の胸元にはフラッピとチョッピが抱きしめられている。 
 セシウム「次の一撃でプリキュアの人数が二人減る確率98%…。いや…、四人かな…?フッ…、終わりだな…」
 
 満「くっ!何か打つ手はないの?」
 
 薫「セシウムの動きを止める事が出来れば…」
 
 その時、戦線にフェアリーリップが復帰した。
 
 紡「咲さんと舞さんをこちらに。ブルームとウィンディは力を溜めて下さい」
 
 満「でも、セシウムの足を止める事が出来なきゃ」
 
 薫「貴女…、まさか!?」
 
 フェアリーリップが首を横に振る。
 
 紡「それは私の役目ではない様です」
 
 セシウム「ほほう…。全員揃ったか…。なら…、全員仲良く死ぬがいい…!」
 
 セシウムがプリキュア達に止めを刺そうと両手を構えた。
 
  両手に青白い炎が浮かび上がる。 
  その時だった。 
 セシウム「何ぃ!!!?」
 
 それは一瞬の出来事だった。
 
  何者かがセシウムを後ろから羽交い絞めにした。 
  それはリチウムだった。 
 セシウム「リチウムっ!何の真似だ!?私を裏切ると言うのかっ!!想定外だっ!!!」
 
 リチウム「裏切ってなどいません…。私の心は今も昔も変わっていません…」
 
 リチウムの声は、いつもの荒々しい声でもなく、セシウムの前での猫なで声でもない、穏やかな、そして優しい声だった。
 
 セシウム「なら、この手を今直ぐ離すんだ!今ならマーキュリー様に頼んで、お前の身体を直していただく様、頼んでやろう!早く、放せっ!」
 
 リチウム「もう遅いんです…。セシウム様…」
 
 後ろから羽交い絞めにされているセシウムからは見えないが、リチウムの身体の下半身は既に崩れ去っていた。
 
 リチウム「私は永遠の命なんてどうでも良かった…。ただ、貴方と一緒にいたかった…。貴方の期待に応えたかった…。それだけで充分だった…」
 
 リチウムの瞳から透明な鉱石(水晶)が零れ落ちた。
 
  それは涙の様にも見えた。 
  リチウムの脳裏にセシウムとの思い出が浮かんでは消えていった。 
 リチウム「セシウム様…。愛してます…」
 
 セシウム「ふざけるなーーーーー!!私は…っ!私はネオ・ダークフォールの最高幹部だぞーーー!!離せっ!!この豚がっ!!メス豚がーーーー!!!」
 
 リチウムがフェアリーリップに視線を向ける。
 
  フェアリーリップもリチウムから目を逸らす事はない。 
 薫「フェアリーリップ…、いいの…?」
 
 フェアリーリップはリチウムから目を逸らす事無く、黙って頷いた。
 
 セシウム「はっ!!?」
 
 セシウムの目に映ったのは、手を繋ぎ、目を瞑る、精霊の力を集めているブライトとウィンディの姿だった。
 
 セシウム「想定外だっ!止せっ!止せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 
 二人の掲げた掌に精霊の力が集う。
 
 薫「精霊の光よ!命の輝きよ!」
 
 満「希望へ導け!二つの心!」
 
 満薫「プリキュア・スパイラルスター」
 
 セシウム「止せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 
 満薫「スプラーーーーーーーーッシュ!!」
 
 ブルームとウィンディの両手から放たれた光がセシウムとリチウムを包み込む。
 
 リチウム「セシウム…さ…ま…、あ…い…」
 
 セシウム「何故だっ!プリキュアをっ!プリキュアを圧倒していた私がっ!この私がっ!!この私がっ!!何故だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
 
 セシウムとリチウムは光の渦に消えていった。
 
  光の渦が消えた後には二つの宝石が残っていたが、それも間もなく地面へ落ちた。 
 
 
 ブライト、ウィンディ、フェアリーリップは変身を解いていた。
 
  咲と舞もぐったりとしているフラッピとチョッピを抱いたまま、満達と合流した。 
  紡の足元には二つの宝石が落ちていた。 
  紡は、それを拾い上げ、二つの宝石を一緒に土に埋めた。 
 薫「紡…」
 
 紡「これで良かったんですよね…。先生…」
 
 
 
 
 
 
  キャスト日向咲(キュアブルーム)/声:樹元オリエ
 
  美翔舞(キュアイーグレット)/声:榎本温子 
  霧生満(キュアブライト)/声:岡村明美 
  霧生薫(キュアウィンディ)/声:渕崎ゆり子 
 フラッピ/声:山口勝平
 
  チョッピ/声:松来未祐 
  ムープ/声:渕崎ゆり子 
  フープ/声:岡村明美 
  ドロドロン/声:岩田光央 
 紡(フェアリーリップ)/声:斎藤千和
 
 カーボニウム6/声:高木渉
 
  リチウム3/声:喜多村英梨 
  セシウム55/声:島田敏
 
 
 
 
 第11話「最強は最硬!?カーボニウム脅威の力」へ続く
 
 
    
 
 
  
 
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