第9話「パンパカ歓迎会は嵐の予感」
運命の日まで後6日。
イリジウムとの激闘の翌日。
夕凪中学校のソフトボール部の旧部室に舞と満と薫、精霊達、そして紡が集まっていた。
小さな木製のテーブルの上には、PANPAKA・パンのパンやケーキ、飲み物が並んでいる。
そう、これから紡の歓迎会をやろうというのだ。
ネオ・ダークフォールの襲来や咲の入院等、色々な事があって出来なかったが、運命の日まで1週間を切った今、今日しかないと言う咲からの提案だった。
だが、そこに咲の姿はなかった。
度重なる病院からの脱走に沙織の雷が落ちた。
検査に遅れた事もあり、退院が一日延びてしまったのである。
本来なら咲の退院祝いも兼ねていたのだったが。
舞「仕方ないわよね…」
薫「また、咲が退院した時に、退院祝いをすればいいのよ」
満「そうよ!ネオ・ダークフォールを倒した後に紡も一緒に…」
その時、満に疑問が浮かんだ。
満「そう言えば、紡はネオ・ダークフォールを倒した後はどうするの?やっぱり、未来へ戻るの?」
紡「え…。そ、そうですね…。いつまでもこの世界に留まっておく事はできませんから…」
紡は少し俯き加減で語り始めた。
紡「今の世界に10年前の私が存在しています…。もし、私がこの世界の私と出会ってしまえば、一体何が起こるか検討もつきません…」
紡「ですので、運命の日に合わせて自動的に未来へ帰る様に設定されているのです…」
舞「そんな…」
ムープ「紡と分かれたくないムプ!」
フープ「友達ププ!」
そう言ってムープとフープが紡の膝元に飛んで行った。
チョッピ「今直ぐ帰る訳じゃないチョピ」
薫「そうよ。お別れしたとしても、また10年後の世界で会えるんだから。ね?」
薫は紡にそう問いかけた。
紡「え…?あ…、はい…」
薫「…?」
ムープ「10年も待てないムプ~」
フープ「寂しいププ~」
舞「今日は紡さんの歓迎会よ。もう、この話は止めましょ」
満「そうね。ごめんなさいね」
紡「いいんです!こんな会を開いていただけるなんで思ってもいませんでしたので…、本当に嬉しいです…」
その時、ソフトボール部の旧部室のドアが突然開いた。
そこには息を切らせた咲が立っていた。
フラッピがミックスコミューンから精霊の姿に戻る。
一同「咲!」
咲「ゴメン、ゴメン…。ちょ、ちょっと、水だけ飲ませて!」
そう言うと舞から差し出されたジュースを一気に飲み干していく。
フラッピ「紡の歓迎会に出るって聞かなかったラピ~」
満「咲、そんな事して昨日お母さんに怒られたばかりじゃない」
薫「そうよ。これでまた入院が伸びたら元も子もないわよ」
ジュースを飲み干した咲が一息ついて言った。
咲「プハ~。だって、紡は私の命の恩人なんだから、歓迎会に出ない訳いかないでしょ!乾杯だけ、乾杯だけ済ませたら直ぐに病院戻るから!ね?ね?」
舞「もう、咲ったら~」
一同呆れ顔だった。
だが、咲のこの行動力にみんな何度救われた事か。
そこにいる誰もが知っていた。
各々がジュースの入った紙コップを手に取った。
咲「オホン…。では…。紡!私達の町へいらっしゃ~い!」
一同「いらっしゃ~い…?」
満「…いらっしゃいって、何か変じゃない?」
咲「え?そうかな?」
紡「ありがとうございます…」
その時、フラッピとチョッピの耳が飛び上がった。
フラッピ「咲!嫌な気配ラピ~!」
チョッピ「気を付けるチョピ~!」
咲「も~、こんな時に!」
舞「行きましょう!」
満、薫、紡と精霊達が頷いた。
夕凪の郊外にある廃品集積所。
所謂、スクラップ置き場だ。
その山積みされた家電製品等の鉄クズの上にリチウムは座り、足を組んでいた。
前回と同様、愛用と思われる煙管を吹かせている。
そこに咲達が現れた。
リチウム「やっとお出ましかい…プリキュア…」
手に持っていた煙管をひっくり返し、火種を落とす。
紡「お前は…!」
薫が紡を手で静止する。
紡「大丈夫です…。分かってます…」
紡は、リチウムの姿に思わず身体が反応してしまったが、直ぐに冷静さを取り戻した。
自分のせいで二度も薫を失う所だった。
もうあんな思いはしたくない。
勿論、リチウムに対しての復讐心が決して消えた訳ではない。
だが今の紡には、その復讐心より薫を、みんなを守りたいと思う気持ちの方が上回っていた。
リチウム「おや?死に損ない二人も一緒じゃないか。探し回る手間が省けたってもんだよ」
紡「リチウム…、貴女の事を私は絶対に許せない!だから…、私とプリキュアが貴女を倒す!」
薫「紡…」
舞「紡さん…!」
リチウム「ハッ!大した自身じゃないか!だけど、そんなに上手くいくかしらねぇ~。超ウザイナー!」
その声と共にリチウムが座っていた電化製品等の鉄クズの山が盛り上がり、超ウザイナーの姿に変化した。
リチウムが足を組んで座っている場所が、ちょうど超ウザイナーの肩の部分に座っているという形になった。
超ウザイナー「チョー、ウザイナ~」
咲「みんな行くよ!」
舞達が頷いた。
フラッピ達がミックスコミューンに姿を変える。
咲達がミックスコミューンを構えた。
咲舞満薫「デュアル・スピリチュアル・パワー!」
紡も腰のポーチからピンクリップを取り出す。
紡「フェアリーリップ・メイクアップ!」
咲「花開け大地に!」
舞「羽ばたけ空に!」
満「未来を照らし!」
薫「勇気を運べ!」
咲「輝く金の花、キュアブルーム!」
舞「煌く銀の翼、キュアキーグレット!」
満「天空に満ちる月、キュアブライト!」
薫「大地に薫る風、キュアウィンディ!」
紡「自然と科学のコンダクター、フェアリーリップ!」
咲舞満薫「プリキュア・スプラッシュスター!!!!」
舞「聖なる泉を」
薫「汚す者よ!」
満「阿漕な真似は」
咲「お止めなさい!」
リチウム「全員揃ったね…。でも、今日は前回と違うよ…。何故なら、アンタ達全員の抹殺命令があの人から出てるからね~。ここで死んでもらうよ!」
そのリチウムの言葉にプリキュア達が緊張する中、ブルームだけは余裕の面持ちだった。
咲「そうは行かないわ!何てったって私達にはつよ~い助っ人がいるんだから!ねえ、フェアリーリップ!」
紡「え?ええ…」
ブルームの言葉にフェアリーリップは困惑気味だ。
咲「じゃあ、パパっとやっちゃって!カレハーン!」
しかし、何も反応がない。
咲「…あれ?」
紡「あの…、実は…あれからグリーンリップの反応がなくって…」
咲「え~!!!?」
薫「頼りにならない男ね」
満「そうね。元々当てにしていなかったけど」
ブライトとウィンディは冷め切った眼差しと口調で答えた。
紡「す、すみません!」
フェアリーリップが慌てて頭を下げる。
満「ち、違うのよ!フェアリーリップの事を言ってたんじゃないの!カレハーンの事よ!カレハーン!」
ブライトも慌てて訂正した。
薫「貴女の事は頼りにしてるわ。フェアリーリップ」
そう言ってウィンディは微笑んだ。
紡「はい!先生!」
フェアリーリップにも笑顔が戻った。
リチウム「何、ゴチャゴチャと言ってるんだい…。隠し玉が無いってなら、さっさと死んでもらうよ。行きな!超ウザウイナー!!」
超ウザイナー「チョー、ウザイナ~」
舞「来るわ!」
咲「うん!行くよ、みんな!」
一同が頷いた。
リチウムが超ウザイナーの肩から飛び降りる。
ブルームとイーグレットが超ウザイナーと、ブライトとウィンディ、そしてフェアリーリップがリチウムと対峙した。
リチウム「おや~?この間、ギャーギャー騒いでた小娘が、今日はやけに大人しいじゃないかい?」
紡「くっ…!」
薫「フェアリーリップ」
紡「分かってます…」
リチウム「まあ、何にせよ、今日がアンタ達の命日になる事は変わりないんだからね~」
そう言った途端、リチウムがフェアリーリップ達の視界から消えた。
満薫紡「!!?」
その直後、リチウムがブライトとウィンディの目の前に突然現れ、二人を吹き飛ばした。
満薫「うわあああ~!!」
紡「ウィンディ!ブライト!」
フェアリーリップがブライトとウィンディに目を向けた時には、既にリチウムが目の前にいた。
リチウムの手刀がフェアリーリップを襲う。
それをフェアリーリップは仰け反りながら寸前でかわした。
しかし、寸前でかわしたはずのフェアリーリップの身体に痛みが走った。
紡「くっ!」
その痛みを堪えて、直ぐに反撃に移る。
紡「たあ!」
しかし、そこには既にリチウムの姿はなかった。
最初に対峙した場所にリチウムの姿があった。
紡「くっ!」
満「何なの…。あの動き…。テレポートでもしてるの…?」
薫「それにこの痺れ…」
直撃を受けたブライトとウィンディの手がブルブルと震えていた。
紡「テレポートではないと思います。私は未来でリチウムと会いましたが、その時も高速移動を使っていました。ですが…」
紡「今日のスピードは未来で見たリチウムのスピードの比ではありません。それに、ギリギリでかわしたはずなのに、私にも痛みが…」
リチウム「一度喰らってるとは言え…、私の初撃をかわしたのは、アンタが初めてだよ…。まあ…」
リチウムの言葉が終わる前に、フェアリーリップが吹き飛んだ。
紡「きゃ~!」
満「早い!」
薫「たあ!」
ブライトとウィンディと拳と蹴りが空振る。
二人が攻撃したリチウムは残像だった。
リチウムは既に数メートル先に立っていた。
リチウム「無駄…、無駄…。アタシはネオ・ダークフォール最速の戦士リチウム3(スリー)だよ…。アンタらなんかに捉えられる訳ないだろう…。アハハハハ…」
満「くっ!」
その頃、ブルームとイーグレットも超ウザイナーに苦戦していた。
リチウムの呼び出した超ウザイナーは、スクラップの電化製品等の鉄クズの塊だ。
しかも、身体を破壊しても、周りの鉄クズを吸い上げ、直ぐに身体を補修する。
咲「コイツ、限が無いよ~」
舞「ええ…、ウィンディ達も苦戦してるみたい」
咲「リチウムとか言った怪人…、フェアリーリップに深手を負わせるなんて只者じゃないよ」
舞「早く助けに行かないと…」
目の前の敵に集中出来ていないブルームとイーグレットを超ウザイナーの攻撃が襲う。
超「チョー、ウザイナ~」
超ウザイナーの両腕が大砲の様な形に変化した。
その両腕から発射されたスクラップの砲弾が、ブルームとイーグレットを直撃した。
咲舞「きゃ~!!」
満「ブルーム!」
薫「イーグレット!」
リチウム「ハンッ!他人の心配してる暇があるのかい!?」
数メートル先にいたはずのリチウムの声がブライトとウィンディの背後で聞こえた。
だが、振り向く間もなく、リチウムの手刀で左右に吹き飛ばされた。
満薫「うわあああ~!!」
紡「ウィンディ!ブライト!」
リチウムと対峙した後、ブライト達は一度もリチウムに攻撃を与えれていない。
だが、リチウムの攻撃はフェアリーリップが初弾を避けただけで、残りは避ける事さえ出来ていない。
リチウムとの距離が離れていると思った瞬間、目の前に現れ、反撃しようとした時は、もう既に数メートル先にいる。
まるで、幻と戦っている様だった。
だが、それは決して幻ではない。
ブライト、ウィンディ、フェアリーリップの身体に確実にダメージは蓄積され、疲労も溜まっていく。
しかし、一番のダメージは肉体的なダメージより、精神的なダメージだった。
先日のイリジウムとの戦いでは、イリジウム圧倒的優位の中でも、プリキュア達の攻撃も当たっていた。
だがリチウムには、まだ一度も攻撃を与えるどころか、触れる事さえ出来ていない。
勿論、ブライトの光弾やウィンディの風での攻撃も試みたが、リチウムのスピードの前では楽々とかわされ、逆にその隙を狙われてしまった。
焦りがミスを生み、そのミスがリチウムに更なる攻撃の隙を与える。
正に悪循環だった。
薫「つ、強い…!」
イリジウムとの戦いとは違う絶望感をブライト達を襲う。
リチウム「速さこそ力…、力こそ生(せい)!力のないアンタ達は死ぬしかないんだよ…。アハハハハ…」
リチウムの高笑いが響き渡った。
だが、リチウムの攻撃を何度も受けて分かった事もあった。
紡「分かりました…」
フェアリーリップが小声でブライトとウィンディに話しかけた。
紡「リチウムの力は、多分電気です。リチウムは電気の力で自分自身を電磁石に変えて、周りや地中の鉄クズと反発させて超スピードを出しているのです」
薫「やっぱり、あの痺れは電気によるものなのね」
紡「はい…。それに、さっきから高速で繰り出される攻撃は全て直線的です…。リニアモーターカーと同じシステムです」
満「じゃあ、この場所を離れれば、あのスピードを封じ込めれるんじゃないの?」
フェアリーリップが首を横に振る。
紡「確かに森等で戦えば、今までのスピードは出せないかも知れません。しかし、リチウムがそれに乗るとは思えません…」
薫「最初から自分が有利な場所におびき寄せてたって事ね…」
満「でも、理屈が分かってもどうすれば…」
紡「…」
リチウム「何をゴチャゴチャ言ってるんだい」
その声は既に目の前で聞こえた。
フェアリーリップ達の顔が青ざめる。
満薫紡「きゃ~!!!」
三人は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
だが、いくら身体がボロボロでも、このまま寝てる訳にはいかない。
三人が、よろよろと立ち上がる。
リチウム「どんな小細工をしたって無駄なんだよ…」
リ チウム「速さこそ…」
立ち上がったばかりのブライトをリチウムの一撃が襲い、再び吹き飛ばされた。
リチウム「力!」
ブライトを吹き飛ばしたリチウムが消えたと思った瞬間、ウィンディの目の前に現れて手刀を繰り出した。
そして、ウィンディが地面に倒れる1秒も満たない間に、リチウムは既にフェアリーリップの前に立ちはだかっていた。
リチウム「力こそ生(せい)…」
先日のフェアリーリップに与えたのと同じ喉を狙った手刀がフェアリーリップを貫いた。
咲舞「フェアリーリップ!!」
紡「くっ!」
フェアリーリップは、その攻撃が当たる寸前で防御したが、その一撃の勢いに圧され吹き飛ばされた。
まるで水面を跳ねる石切りの様に地面へ何度も跳ね飛ばされて倒れた。
リチウム「やっと静かになったね~。さぁ~て…。じゃあ、一人一人止めを刺していきますか…」
リチウムが一番近くで倒れているウィンディの下に歩み寄っていく。
ブライトも起き上がる様子がない。
咲舞「ウィンディ!!」
ブルームとイーグレットが気を失っているウィンディの下に駆け寄ろうとする。
だが、超ウザイナーの腕が伸び、ウィンディの下に駆け寄ろうとする二人の足を後ろから掴んだ。
超「チョー、ウザイナ~!!」
咲舞「きゃ~!!」
超ウザイナーに投げ飛ばされたブルームとイーグレットが鉄クズの山にぶつかり、鉄クズの山が埃を上げて崩れ落ちた。
気を失っていたフェアリーリップがゆっくりと目を開ける。
その目に映ったのは、倒れているウィンディと、そこに歩み寄るリチウムの姿だった。
フェアリーリップの脳裏に未来での薫とリチウムの対峙シーンがフラッシュバックする。
紡「せんせ…?先生…!薫お姉さーーーーーーーーーーーん!!!」
その時、フェアリーリップに声が聞こえた。
それは先日のイリジウムとの戦いの時に聞こえた声だ。
そして、フェアリーリップのポーチが青色に光った。
紡「はい…。分かりました…!」
リチウム「さて…。この間は殺しそこなっちまったけど、やっぱりアンタが一番先だったね~。アハハハハ…!」
リチウムの手刀がウィンディの首に向けて振り下ろされようとした時だった。
その振り上げた手を何かが打ち抜いた。
リチウム「チィ!!痛いじゃないかっ!!!」
リチウムの手が水で濡れていた。
攻撃が飛んできた方向を見る。
その目に映ったのはフェアリーリップの姿だった。
だが、雰囲気が全く違う。
まるで別人の様だった。
フェアリーリップのコスチュームの一部が波しぶきの様な形に変わり、瞳の色は茶色から青色に変わっていた。
その時、鉄クズの山からブルームとイーグレットが飛び出した。
超ウザイナーにブルームとイーグレットが同時に蹴りを入れる。
咲舞「たあ~!!」
超ウザイナー「チョ~、ウザイナ~」
今後は逆に超ウザイナーが後ろの鉄クズの山に崩れ落ち、埃が舞い上がった。
そのブルームとイーグレットにフェアリーリップが目を向けた。
?「オ~ッホホホホホホホ…!伝説の戦士プリキュア…、ご機嫌いかが?」
舞「そ、その声はまさか…!?」
咲「ハナミズターレ!」
シタターレ「ミズ・シタターレよっ!!いい加減に覚えなさいよっ!」
そのやり取りの間に、気を失って倒れていたブライトとウィンディが、よろよろと起き上がった。
満「ミズ…、シタターレ…」
薫「貴女も…」
シタターレ「そうよ。この私(わたくし)は水の泉の守護精霊。その私をシタターレ姉さんって、慕ってるアンタ達を見捨てると思って?」
咲「し、シタターレ姉さんって…」
リチウム「アンタ、何者(なにもん)だい?アタシの女の勘が言ってるんだよ…。アンタ…、さっきまでの小娘じゃないね!?」
今までのやり取りの様子を窺っていたリチウムが会話を遮った。
シタターレ「オ~ッホホホホホホホ…!私(わたくし)はミズ・シタターレ…。水の泉の守護精霊ですわ」
リチウム「水…、だと…」
ミズ・シタターレがプリキュアを見回す。
プリキュアの姿は皆ボロボロだった。
超ウザイナー「チョー、ウザイナ~」
その時、ブライトとイーグレットの攻撃によって倒れていた超ウザイナーが起き上がってきた。
シタターレが再びリチウムに目を向けた。
シタターレ「貴女…、よくも私(わたくし)の妹分を可愛がってくれたわね…。このまま帰れるとは思わない事ね…。行くわよ!伝説の戦士プリキュア!」
シタターレの言葉にプリキュアが頷いた。
咲「よろしくね!ハナタレターレ」
シタターレ「鼻かんだろか~い!」
リチウム「フン!小娘の中身がおばさんに変わった所で、今の現状が変わる訳ないんだよ…。行くよ!超ウザイナー!」
超ウザイナー「チョー、ウザイナー!」
シタターレ「誰がおばさんじゃい!貴女に格の違いってものを教えなくてはいけないようね…」
そう言うとシタターレが、掌を空に向けた。
すると空に雨雲が出来、その雲が空で渦を巻き始めた。
そして、その渦の中心からシタターレの掌に向かって大量の水が流れ落ちる。
その水が集まり、シタターレの掌の上で、強大な水の塊を作り出した。
しかも、それは一つや二つではない。
十数個もの水の塊がスクラップ工場の敷地内に浮かんでいた。
リチウム「これが何だってんだい?水風船をアタシにぶつけた所で、痛くも痒くもないよ」
リチウム「まあ、それ以前にこのアタシに当てれるかしらね~?アハハハハハハ…」
シタターレ「オ~ッホホホホホホホ…。これがそんな事の為にあると思って?」
満薫「たあー!」
リチウムがシタターレに気を取られている隙を突き、ブライトとウィンディが飛び掛かった。
リチウム「フン…!」
リチウムが超スピードで避ける。
だが、直ぐ横の水の塊にぶつかり、水の塊が砕け散った。
しかも、リチウムの身体から空中に散らばった水滴に向かって電気が走った。
リチウム「チィ!!」
シタターレ「オ~ッホホホ…。やっと分かったようね。そう、これは貴女を攻撃する物ではなくてよ。貴女の動きを制限する物…」
シタターレ「そして貴女の電気の力と伝導率の高い水…。もう電気の力は使えないでしょ…。オ~ッホホホ…」
リチウム「アハハハハハハ…!何だい…。何だい!こんな物!超ウザイナー!この水の塊を全部壊すんだよ!」
超「チョー、ウザイナー!」
超ウザイナーの腕から発射されたスクラップの砲弾が、周りの水の塊を壊し始めた。
だが、水の塊は壊しても壊しても再生する。
シタターレ「オ~ッホホホ…!水の力をご存じないのね…。この星は水の星…。海や川だけじゃない…。地中や空気中にも存在する…」
シタターレ「そう!水の力は無限…。貴女はこの星と戦う事になるのよ!この私(わたくし)に逆らおうなんて100万年早いマンネン!オ~ッホホホ…」
そう言ってリチウムを指差した。
リチウム「アハハハハハハ…!イラつくね~。イラつく…!イラつくんだよ~!!!」
笑い声とは対称にリチウムの表情は怒りに震えていた。
リチウムの身体から、周りに電気が漏れ出す。
リチウム「ネオ・ダクフォール幹部のアタシの力…、ナメるんじゃないよ!!!!」
その声と共にリチウムの身体から四方八方に電撃が走り、スクラップ置き場内の水の塊を全て吹き飛ばした。
鉄クズの山にも電撃が流れ、山が崩れ落ちる。
その吹き飛ばされた水が辺り一体に霧を生んだ。
その霧の中に息を切らせたリチウムの姿が浮かぶ。
リチウム「ハア…、ハア…。これで水と一緒にプリキュアも消し飛んだだろ…。ハハハハハ…、アーハッハッハッハッハ…?何ぃ!?」
霧の中から精霊のバリアを張ったプリキュア達の姿が現れた。
シタターレ「オ~ッホホホ…!貴女のやる事なんて全てお見通しよ。あら?苦しそうね。もう力を全て使ったって感じじゃない?オ~ッホホホ…」
シタターレ「電気の力も水の力の前では、意味ナッシ~ング!オ~ッホホホ…ア~ッハハハハハ…」
リチウム「フフフ…、アハハハハハハハハ…!」
シタターレ「お…?」
リチウム「このアタシが何の策も無く、この場所を選んだと思ってるのかい?超ウザイナー!」
すると、超ウザイナーが空に向けてスクラップの砲弾を何発も撃ち出した。
舞「みんな!あれを見て!」
イーグレットが指差した先には電気を送る高圧線があった。
咲「まさか!」
超ウザイナーが撃ち出したスクラップの砲弾は高圧線を狙っていたのだ。
スクラップの砲弾が高圧線を切断し、ケーブルが垂れ下がってきた。
するとリチウムは、垂れ下がってパチパチと放電しているケーブルを自分の身体に当てた。
リチウムの身体に高圧線の電気が流れ込む。
リチウム「アーハッハッハ…!水の力が無限って言うんなら、電気の力も無限なんだよ!なら、どちらの力が無限なのか、力比べと行こうじゃないか!」
薫「貴女…、スピードは早いけど、頭の回転は遅い様ね…」
ウィンディが冷め切った眼差しと口調で声を発した。
リチウム「何だって!?」
その時、リチウムの身体に流れ込んでいた電気が止まった。
リチウム「何ぃ!!?」
満「電線が切れているのに、電力会社が何時までも電気を流し続ける訳ないでしょ…」
リチウムの肩が再び怒りに震えた。
シタターレ「今よ!伝説の戦士プリキュア!」
ブルームとイーグレットが手を繋ぎ、目を瞑る。
咲「大地の精霊よ」
舞「大空の精霊よ」
二人の掲げた掌に精霊の力が集う。
舞「今、プリキュアと共に!」
咲「奇跡の力を解き放て!」
リチウム「チィ!アイツとは相性悪いようだね!」
そう言うとリチウムは超ウザイナーの陰に隠れた。
咲舞「プリキュア・ツインストリーム」
咲舞「スプラーーーーーーーッシュ!!」
二人の両手から放たれた光が超ウザイナーを包み込む。
超「チョ、チョ~、ウザイナ~」
光の渦に巻き込まれた超ウザイナーは元のスクラップに戻っていった。
リチウムは超ウザイナーを盾にして逃げおおせた様だ。
舞「貴女まで味方になってくれるなんて」
満「そうね」
薫「味方として頼もしいわ」
シタターレ「オ~ッホホホホホ…。私(わたくし)の可愛い妹分を見捨てる訳ないでしょ?」
咲「って、妹分って…。でも、ありがとう!ミズ・シミッタレ!」
シタターレ「ミズ・シタターレよっ!!シタターレっ!絶対、わざと間違ってるでしょ!」
ブルーム達の笑い声が晴れ渡った空に響き渡った。
キャスト
日向咲(キュアブルーム)/声:樹元オリエ
美翔舞(キュアイーグレット)/声:榎本温子
霧生満(キュアブライト)/声:岡村明美
霧生薫(キュアウィンディ)/声:渕崎ゆり子
フラッピ/声:山口勝平
チョッピ/声:松来未祐
ムープ/声:渕崎ゆり子
フープ/声:岡村明美
ミズ・シタターレ/声:松井菜桜子
紡(フェアリーリップ)/声:斎藤千和
リチウム3/声:喜多村英梨
超ウザイナー/声:渡辺英雄
第10話「遂に登場!最高幹部」へ続く
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