ちょ~短編「ふたりはプリキュア マックスハート 対 ダークフォール」
「美墨なぎさ」の弟「亮太」は病院のベッドの上で、身体中に包帯を巻いた状態で眠っていた。
その身体を覆った包帯は頭部まで達していたが、なぎさや両親には医師から、もう命の心配はないと告げられていた。
母の「理恵」がベッドの横で、眠っている亮太の手を握っている。
その脇で父の「岳」も、その様子を見守っていた。
亮太は、先の「ダークフォール」の襲撃によって、重傷を負ってしまったのだった。
静まり返った病室の隅に佇み、俯く、なぎさの表情は伺え知れなかった。
ただ、誰にも聞こえない様な小さな声で「行って来る」と呟き、病室を後にした。
病室の外では、「雪城ほのか」と「九条ひかり」、そして、妖精の「メップル」、「ミップル」、「ポルン」、「ルルン」が心配そうに待っていた。
先程、病室から出てきた医師からは、もう心配はないとは聞いていたが、病室の外からも病室内の重苦しい空気は感じ取れていた。
「ポポ…」
「ルル…」
ポルンは不安そうにしているルルンの手を握り続けていた。
そんな時、病室のドアが開き、なぎさが病室から出てきた。
なぎさは何も語らないが、その目には強い決意が宿っていた。
なぎさがほのかに目を向けると、ほのかも黙って頷いた。
二人の想いを悟ったメップルとミップルは、お互いを見交わした後、「ハートフルコミューン」へと姿を変えた。
ハートフルコミューンを手にした二人は、病院の出口へと足を向けるのだった。
二人の雰囲気に気押されたひかりは、思わず遅れを取ってしまった。
ポルン、ルルンを抱き上げると、急いで二人を負った。
ひかりが追いついた時、二人の姿は病院の外にあった。
「なぎさん!ほのかさん!何処に行かれるつもりですか!?」
だが、ひかりの問いになぎさもほのかも答えない。
しかし、ひかりもそれに構わず、必死に呼びかけ続ける。
「あの敵と戦うと言うんですか!?…無理です!お二人は『ジャアクキング』との戦いでプリキュアとして残された力はっ!…もう…」
そんなひかりの悲痛な叫びにもなぎさ、ほのかが振り向く事はない。
二人が見つめる先には、遥か彼方の空に立ち込める暗雲があった。
「ポポ…」
「ルル…」
ひかりと共に心配そうになぎさとほのかを見つめるポルンとルルン。
「それに!…次にプリキュアに変身したら…、もう二度と…、プリキュアには…」
ひかりは声を詰まらせ、俯いた。
その頬を一筋の涙が伝わる。
「それでも行かなきゃ…!」
亮太の病室を出てから、初めて発せられたなぎさの言葉だった。
ほのかが、それに続く。
「あそこには苦しんでいる人達がいる…!」
「例えこれで…!…二度とプリキュアになれなくなったとしてもっ!」
「大好きな人達、この世界を守る、それが…」
ひかりが、二人の代わりに言葉を続ける。
「プリキュア…」
ひかりのその声になぎさとほのかが振り向いた。
しかし、その表情は意外にも笑顔だった。
だが、二人の目からは先程と変わらぬ決意が伝わってきた。
そんな決意の強さをひかりは感じ取った。
その時、なぎさの表情が曇る。
「…正直言って、私だって怖いよ…」
「なぎさ…」
なぎさが言葉を続ける。
「でも…!」
なぎさの脳裏に目の前で大怪我をした亮太の姿が浮かんだ。
亮太の助けを求めた手を掴む事が出来なかった自分。
もし、あの時、プリキュアに変身していれば、亮太を助けられたかも知れない。
そんな自責の念は、ほのかも一緒だった。
あの時、自分が躊躇しなければ。
亮太が運ばれた病院に駆け付けたひかりが見たのは、号泣するなぎさと茫然自失のほのかの姿だった。
俯いた二人が下唇を噛み、握った拳に力が入る。
「なぎささん…、ほのかさん…」
「もう…、亮太と同じ様な思いは誰にもさせないっ!」
なぎさの心の底から絞り出た言葉だった。
「それに私は一人じゃない…。ほのかがいる」
「なぎさ…」
「それに、ひかりがいる…」
「なぎささん…」
ハートフルコミューンからメップルとミップルも顔を出した。
「メップルも一緒メポ」
「ミップルも一緒ミポ」
それにポルンとルルンも続く。
「ひかりはポルンが守るポポ!」
「ルルンもついてるルル」
「ポルン…、ルルン…」
ひかりは膝を着き、ポルンとルルンを抱きしめた。
その姿を見たなぎさとほのかは、再び暗雲立ちこめる遥か彼方の空を再び見つめた。
「私たちの中に、希望と勇気がある限り!」
「あたしたちは誰にも絶対に負けない!」
ひかりが涙をぬぐい、立ち上がる。
「はい!」
そして、三人は遥か彼方に浮かぶ暗雲に向かって走り出した。
「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!」
「ルミナス・シャイニング・ストリーム!」
「キュアブラック」、「キュアホワイト」、そして「シャイニールミナス」へと変身したなぎさ、ほのか、ひかりは、未知の敵が待ち受けているであろう、
あの暗雲の下へと急ぐのであった。
今、世界に訪れている危機を感じる者がここにもいた。
だが、その者の姿は全身を覆ったローブに隠れ、見る事が出来ない。
そのローブを纏った者が立つ世界は、緑溢れる世界だった。
だが、そこはまるでこの世とは思えない雰囲気を醸し出していた。
その空、そして大地には、水滴にも似た生き物で溢れ、光り輝いていた。
それは、何処か「光の園」を連想させる世界だったが、そこは光の園ではなかった。
幻想的な不思議な世界だった。
ローブを纏った者は、遥か彼方に浮かぶ暗雲を、ただじっと見つめていた。
その表情は、ローブによって見る事は出来ないが、僅かに見える口元からは、今の緊迫した表情を伺い知る事が出来た。
「きゃぁああああ!!」
岩壁に叩きつけられるプリキュア達。
そこは、元々緑豊かな場所だった。
だが、今そこには草が枯れ剥き出しになった大地と、葉が枯れ、今にも崩れ落ちそうな木々が広がるばかりだった。
そこには、一輪の花も、空を飛ぶ鳥の姿もなかった。
そこにあったのは、プリキュア達を取り囲む、何匹もの怪物の姿だった。
その姿は、何処か「ザケンナー」に通じるものがあった。
「ウザイナ~!」
そう言いながら、怪物達はプリキュアへと迫ってくる。
「くっ…!」
プリキュア達は立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。
ジャアクキングを倒した時の様な力が湧き出ない。
ひかりの話によると、「クィーン」の対の存在であるジャアクキングを倒した事によって、対であるクィーン自体の力も弱まり、
それがプリキュアの力にも影響しているのだと言う。
その時、立ち上がれないでいるプリキュア達に迫り来る怪物達の足が突如止まった。
「伝説の戦士プリキュア…。この程度の者とはな…」
声は、何処からともなく響いてきた。
「こ…、この声…は…!?」
その声にブラックは聞き覚えがあった。
亮太が怪物に襲われる前に聞いた声だった。
その一帯に一陣の風が吹き、枯葉が舞うと、その風が竜巻の様に変化した。
「くっ!」
竜巻から巻き起こる凄まじい風によって、プリキュア達も直視する事が出来ない。
そして、その竜巻に引き寄せられた枯葉が集まり、それが徐々に人の姿を模っていった。
風が収まった時、プリキュアが目にしたのは、一人の怪人の姿だった。
その姿は、かつての敵「ドツクゾーン」の者達に通じるものがあった。
「アンタはっ…、一体何者!?」
「何が目的なの!?」
まだ立ち上がれず、片膝を付いた状態のブラックとホワイトの問いに、その者が不敵な笑いを浮かべる。
「俺は『カレハーン』…。カレッチと呼んでくれ」
「呼ぶ訳ないでしょ!」
ブラックが直ぐに反応した。
「ドツクゾーンに、まだこんな力があったなんて…」
動揺するホワイトにカレハーンと名乗った怪人が目を向けた。
「ドツクゾーン…?知らんな…。我らは『ダークフォール』!偉大なる『アクダイカーン』様の下、この世界を滅びの世界へと変えるのだっ!」
「ダークフォール…!?」
「アクダイカーン…!?」
その時、ハートフルコミューンからメップルとミップルが顔を出した。
「『ダークフォール』は聞いた事があるメポ!」
「怖ろしい滅びの国ミポ!」
「ハッ…!その通りだ…。だが我々の目的は、お前達プリキュアではない…。その精霊達を渡してもらおう…」
そう言ってカレハーンは、ハートフルコミューンから顔を出しているメップル達を指差した。
「精霊って…ミップル達の事!?」
「それが何だったとしても…」
ブラックが力を振り絞り立ち上がる。
それにホワイト、ルミナスも続き、立ち上がった。
「アンタなんかに渡す訳ないでしょ!」
プリキュア達の強い決意の宿った目がカレハーンを貫いた。
しかし、この圧倒的な状況の中、それはカレハーンにとって何を意味するものでもなかった。
それどころか、カレハーンの口元には笑みさえも見て取れた。
「まあいい…。『太陽の泉』の在処は、お前たちを倒した後、その精霊どもに聞くとしよう…」
「太陽の…?」
「泉…?」
「行け!ウザイナー!」
「ウザイナ~!!!」
カレハーンの声と共に「ウザイナー」と呼ばれた怪物達が再び動き出した。
「全力で行くよ!」
「ええ!」
「はい!」
ブラックの声にホワイトとルミナスが応える。
「力を合わせるポポ」
「タッチコミューン」からポルンの声が響いた。
「ルミナス!!」
ルミナスの手に「ハーティエル・バトン」が舞い降りた。
ハーティエル・バトンから放たれた虹色の光が、ブラックとホワイトを打ち抜く。
ブラックが構える。
「漲る勇気!」
ホワイトが構える。
「溢れる希望!」
「光り輝く、絆と共に!」
ルミナスの声に、ブラックとホワイトがハーティエル・バトンから放たれ続ける虹色の光の中で手を繋いだ。
「エキストリーム!!」
「ルミナリオーーーー!」
ルミナスの叫びに応えるかの様に、ブラックとホワイトの前に虹色のハートが現れた。
そして、二人が手を突き出すと、それを合図に虹色のハートから放たれた光の激流が、カレハーンとウザイナー達に向かって行った。
だが。
「フッ…!」
カレハーンの口元が歪んだ。
迫りくる光の激流を前に、全く動じた様子はない。
「ウザイナー!!」
その声と共に一体のウザイナーがカレハーンの前に飛び出た。
そのウザイナーの姿は、巨大な樹木が絡み合って出来たかの様な姿をしていた。
ウザイナーが右手を前に突き出す。
その掌と思われる場所には穴が開いていた。
そして。
「えっ!!!」
プリキュア達から放たれた光の激流が、ウザイナーの右手の穴にどんどん吸われていく。
「そんな…!?」
今まで、何体もの闇の僕(しもべ)達を浄化して力だった。
あのジャアクキングさえも倒した技だった。
それがウザイナーには、全く通用しない。
「プリキュアの力が…!」
「吸い取られてるミポ…!」
そう言って、ハートフルコミューンの中のメップルとミップルが苦しそうな表情を浮かべる。
「ウザイナ…!」
光の激流を吸い込み続けるウザイナー。
それでも、プリキュア達は諦めず、最後の力を振り絞る。
「はぁああああああああ!!!」
しかし。
「もう…力が出ない…ポポ…」
タッチコミューンからポルンの声が聞こえた。
「ポルン…!頑張っ…て…!」
ルミナスも必死に力を込めるが、光の力は弱まっている一方だった。
そして、遂にプリキュアの力が尽きる時が来た。
「もう…」
「力…が…」
その声と共に、ブラックとホワイトが膝から崩れ落ちた。
「ブラック…、ホワイト…」
ルミナスの力も限界だった。
膝が震え、立っているのが、やっとの状態だった。
その時、プリキュアの力を吸い取ったウザイナーから、滅びの力を纏った枯葉の塊が、プリキュアに向けて放たれた。
だが、ブラックとホワイトには立ち上がる力さえ残されてはいない。
徐々に意識も遠のいていった。
「ルルン!」
ルミナスが叫ぶ。
「光が未来を照らすルル~!」
ルルンがそう叫ぶと、ルミナスの胸元に付いている「ハーティエル・ブローチェ」から虹色の光が溢れ、それがバリアとなり、
三人をウザイナーの攻撃から守った。
だが。
「フッ…!」
カレハーンの口元に再び不敵な笑いが浮かんだ。
「ウザイナー!」
その声に応える様に、ウザイナーは再び右手を突き出し、ルミナスの光の力を吸い取っていった。
「そん…な…っ!?」
そして、遂にルミナスも力を使い果たし、力無く崩れた。
「ルミナス…!しっかりするルル!」
だが、最後の力の一滴までも振り絞ったルミナスは、倒れたまま何も答えない。
「ルミ…ナス…」
ルルンの悲壮な声で、微かに意識を取り戻したブラックとホワイトが、起き上がろうとするが、身体に力が入らない。
それでも、少しでも近付こうと、震える手をルミナスに伸ばす。
その姿を見ているカレハーンは、その姿をあざ笑うかの様に声を発した。
「フンッ…。伝説の戦士プリキュアがこの程度とは…。『ゴーヤーン』の情報とやらも、たかが知れているな…」
そう言い放つと、倒れているプリキュア達に近付き、目を落とした。
「さあ、太陽の泉のありかを言え…!」
「何…を…訳の分からない…事を…言ってんの…」
「例え…知ってたとしても…、アナタには…絶対に…教えない…」
喋るのもやっとの状態のブラックとホワイトの答えに、カレハーンの口元から余裕の笑みが消えた。
「ならば、力ずくで聞き出してやろう!ウザイナー!」
その声に今度は、水草を連想させるウザイナーの触手が伸び、プリキュア達を締め上げた。
消え去りそうだった意識が、その激痛によって強制的に引き戻された。
「きゃぁああああああ!!!」
「さあ、言え!太陽の泉は何処だ!」
この世界とは違うと思われる世界で、彼方に立ち込める暗雲を見つめるローブを纏った者。
「プリキュアが倒れます…。見殺しには出来ません…」
それは、そのローブを纏った者から発せられた声だった。
その声は、穏やかだが、威厳のある女性の声だった。
その時、突風が吹き、その者が纏っているローブが風で舞い上がり、飛んでいった。
しかし、その者はその事を歯牙にも掛けない。
ローブの下から現れたのは、幻想的なドレスに身を包んだ小柄な女性だった。
その瞳は常に閉じられ、開く事はない。
その佇まいからは、荘厳さが伺い知れた。
彼女こそ、全ての命を生み出す「世界樹」の精霊「フィーリア」だった。
「フラッピ、チョッピ」
フィーリアの声に何処からともなく、二つの光の珠が飛んで来た。
その光の珠がフィーリアの言葉を待つかの様に、フィーリアの目の前で浮遊している。
その珠は、それぞれ薄い水色とクリーム色の光を発していた。
大きさは、野球のボール位の大きさだろうか。
「フラッピ、チョッピ、時は来ました。新たなプリキュアと共に七つの泉を取り戻すのです」
フィーリアの言葉に頷くかの様に、その光の珠は円を描いて飛ぶと、すぐさま遥か彼方に浮かぶ暗雲へ向かって飛んでいった。
「もう悲鳴を上げる力も無くなったか…。他愛無い…」
ウザイナーの触手によって締め上げられているブラック、ホワイト、ルミナスは、既に力無く項垂れているだけだった。
ウザイナーが締め上げていた触手を緩めると、プリキュア達はそのまま落下し、受け身を取る事もなく倒れ込んだ。
「フッ・・・。これで止めだ!ウザイナー!」
カレハーンの声と共にウザイナーの巨大な触手が、倒れているプリキュア達に振り下ろされる。
だが、もうプリキュア達には指一本動かす力さえ、残ってはいなかった。
「(お父さん…、お母さん…、おばあちゃま…)」
「(アカネさん…、ひかる…)」
「(お父さん…、お母さん…、…亮太…!)」
消え去る意識の中、ブラック、ホワイト、ルミナスの家族や友人達が三人の脳裏には浮かび、そして消えていった。
「フハハハハハッ!!」
勝利を確信したカレハーンの笑い声が木霊した。
どれ程の時間が流れたのだろうか。
それは一瞬の様でもあり、悠久の様にも感じる時間だった。
ブラック、ホワイト、ルミナスの僅かに開いた目に映ったのは、光溢れる光景だった。
「(…ック!)」
「(…イト!)」
「(…ナス!!)」
「(…ラック!)」
「(…ワイト!)」
「(…ミナス!!)」
ブラックとホワイト、ルミナスは消え去りそうな意識の中で、光の中から声が聞こえた。
「(誰かが…呼んでる…?)」
「(この声は…誰…?)」
「(お母…さん…?)」
自分達を呼ぶ女性の声だった。
それは、家族の声だったのだろうか。
それとも友人の声だっただろうか。
聞き覚えはない声なのだが、何故か安心する声だった。
「ブラック!」
「ホワイト!」
「ルミナス!!」
今度ははっきりと聞こえた。
三人の目の焦点が徐々に合ってきた。
そこは、きらきらと輝く光の粒子に溢れていた。
「ここって…、天国…?」
まだ意識がはっきりしない様子のブラックが、そう呟いた。
そして、三人の目に映ったのは、眩い光に包まれた二人の少女の姿だった。
「あの二人は…」
その二人の少女は、まるで光の中に立つ天使の様にも見えた。
ブラック達の意識がはっきりしてくると、その二人の少女の姿が何処か自分達プリキュアに通じているという事に気付いた。
「大丈夫!?」
その少女の一人がブラック達に声をかけた。
ブラック達に振り下ろされたはずのウザイナーの巨大な触手は、その二人の少女達から発せられていると思われる光のバリアによって
受け止められていた。
巨大なウザイナーの触手を、この華奢な二人の少女から発せられる不思議な力が支えていたのだった。
「はぁああああ!!」
二人が力を込めると、二人の身体から光の粒子が溢れ出す。
そして。
「はぁああああああ!!」
二人の気合と共に、その光のバリアが広がり、触手と共にウザイナー本体をも一緒に吹き飛ばした。
「ウザイナ~!」
「何ぃいい!?」
吹き飛ばされたウザイナーが、カレハーンの頭上へと落ちてきた。
そのウザイナーから慌てて逃れるカレハーン。
そして、ウザイナーが地面に落ちるのと同時に、地響きと巨大な土煙が舞い上がった。
「あなた達は…一体…」
ブラックが覚束ない足取りで、起き上がる。
ホワイトとルミナスもそれに続く。
不思議だった。
さっきまで、指一本でさえ動かせなかったというのに、今は何とか立ち上がる事が出来る。
彼女達から溢れている光の粒子のお陰だろうか、それとも彼女達の笑顔からだろうか、身体の痛みが引いていくと共に、力が湧きあがってくる。
「不思議…。痛みが引いていく…」
「それは精霊の力ラピ!」
赤色を基調としたコスチュームに身を包んだ少女のポーチから、妖精が顔を出した。
「え!?えええぇええ!!!」
三人は一様に目を丸くした。
「精霊の力が傷を癒してるチョピ!」
今度はクリーム色のコスチュームに身を包んだ少女のポーチからも違う妖精が顔を出した。
その声を聞いたミップルとメップルが、ブラックとホワイトのハートフルコミューンから顔を出した。
「『フラッピ』と『チョッピ』メポ!」
「二人は『泉の郷』の精霊ミポ!」
「精霊…?」
余りの展開に、取り残されているブラック達。
「メップル、ミップル、お久しぶりチョピ~」
「話は後ラピ!奴らが来るラピ!」
フラッピの声に目をやると、そこには怒りの形相のカレハーンが立っていた。
「貴様ら…、何者だぁああっ!」
怒りに声が震えている。
しかし、二人の少女はそれに動じる事もなく、凛とした態度で名乗りを上げる。
「輝く金の花!キュアブルーム!」
「煌めく銀の翼!キュアイーグレット!」
「ふたりはプリキュア!!」
「聖なる泉を汚す者よ!」
「阿漕な真似は、お止めなさい!」
そう、この二人の少女は確かに「プリキュア」と名乗った。
ブラック達も、その事実に驚きを隠せない。
「私達の他に…!」
「プリキュアがいたなんて…!」
「ぶっちゃけ、ありえな~~~~いっ!」
ホワイトとルミナスの動揺も当然だったが、ブラックはそれ以上に目を白黒させながら叫ぶのであった。
ブルームとイーグレットの言葉に動揺を隠せない者が、もう一人いた。
カレハーンだ。
「聖なる泉だと…?まさか、貴様らも伝説の戦士プリキュアだと言うのか!?」
「そんな事どうだっていいでしょ!」
「みんなを傷付けるなんて、許せない!」
ブルームとイーグレットと名乗った少女、いや、新たなるプリキュアがカレハーンと対峙する。
「まあいい…。これを見ろ!」
冷静さを取り戻したカレハーンが合図すると。
「ウザイナー!」
「ウザイナ~!」
「ウザイナ…!」
プリキュア達を囲むかの様に、地中からウザイナーが姿を現した。
その数、合わせて七体。
ダークフォールが誇る闇の軍団。
七体もの巨大な怪物ウザイナーがプリキュア達を包囲した。
その中には、空を飛ぶ蝉の様なウザイナーや本の形をしたウザイナーの姿まであった。
「幾ら貴様らが強がろうと、この圧倒的な戦力差に変わりはない!さあ、観念して太陽の泉のありかを言え!」
「みんなを傷付けた奴に誰が言うもんですか!い~っだ!」
これ程の圧倒的な戦力の差を見せつけられたというのに、キュアブルームと名乗った少女は、逆にそう言ってカレハーンを挑発した。
「ぬぐっ!?やれウザイナー!」
その号令と共に七体のウザイナーがブルームとイーグレットに襲いかかった。
だが、二人はそれに動じる様子はない。
「行くよ!イーグレット!」
「うん!」
「はぁあああ!!」
二人の気合と共に、身体から精霊の光の粒子が溢れ出す。
そして、一瞬の内に水草ウザイナーの懐に飛び込んだ。
「早いっ!!」
そのスピードは、ブラック、ホワイトをも唸らせる早さだった。
「てやぁあああ!!」
「ウザイナ~!」
ブルーム、イーグレットの一撃で、水草ウザイナーが何十メートルも吹き飛んだ。
「上です!」
ルミナスの声にブルーム、イーグレットが上を向くと、そこには蝉ウザイナーの姿があった。
「ウザイナ~!」
蝉ウザイナーが羽を羽ばたかせる。
すると、強烈な突風がプリキュア達を襲った。
「きゃぁあああ!!」
プリキュア達は、その突風に吹き飛ばされない様、必死に周りの岩や枯れ木にしがみ付いた。
「遊びは終わりだ!やれ!ウザイナー!」
カレハーンの声に蝉ウザイナーが、プリキュア達に突進してきた。
「うわっ!」
プリキュア達はぎりぎりでその突進を避けたが、蝉ウザイナーは再び空高く舞い上がった。
「あの高さじゃ、攻撃は届かないよ!」
「何とか地上に降ろさないと…。それに、あの風はやっかいね…」
「大丈夫!」
ブラックとホワイト、ルミナスの心配を余所に、ブルームがあっけらかんと答えた。
「でも、あの高さでは…!?」
「ここは私達に任せて」
イーグレットはルミナスに笑顔で答えた。
ブルームとイーグレットが意識を集中すると、二人の身体を金色と銀色の精霊の光が覆った。
「はぁああ…!はぁあああ!!」
ブルームとイーグレットがが気合を入れた瞬間、二人の姿は空にあった。
「え!?えぇえええええ!!!」
余りの出来事にブラックが目を白黒させる。
「プリキュアが…!」
「空を飛んでます…!」
その驚きは、ホワイトとルミナスも一緒だった。
それはジャンプというものではない。
ブラックとホワイトも空中の敵と戦った際に、大ジャンプはしているが、ブルームとイーグレットのは、それとは全く異なっていた。
二人は、精霊の光を放ちながら、空を飛んでいたのだった。
「ぶっちゃけ!ありえな~~~いっ!」
ブラックが頭を抱えながら、空に向かって叫んだ。
蝉ウザイナーとブルーム、イーグレットの二人が空中で激突した時だった。
再びルミナスの声が響いた。
「ブラック!ホワイト!」
空を飛ぶブルームとイーグレットに見とれていたブラック達の後ろに、他のウザイナー達が迫っていたのだった。
「うわぁあああ!!」
「ウザイナ~!」
鉢植えウザイナーが伸ばした弦をぎりぎりで避けたブラックとホワイト。
三人は、必死にウザイナーから走って逃げる。
ブルームとイーグレットは空中で蝉ウザイナーの突進を受け止めたはいいが、力と力が均衡している状態だった。
「ブルーム!」
ブラック達のピンチに気付いたイーグレットがブルームの名前を叫んだ。
「分かった!」
二人の会話はこれだけだったが、二人にはこれで十分だった。
イーグレットが蝉ウザイナーを抑えてる手を離すと、力の均衡が一気に崩れた。
そして、タイミングを見計らって、ブルームが手を離した瞬間、バランスを崩した蝉ウザイナーは、ブラック達を襲っていたウザイナーの集団へと
突っ込んでしまった。
「ウザイナ~!!!」
その衝撃で、何体かのウザイナーが浄化された。
「ありがとう~!」
ブラックが空中にいるブルームとイーグレットに手を振る。
「ええい!何をやっている!まずは、アイツらからやれ!」
そう言って、カレハーンは傷付いているブラック達を指差した。
「ウザイナー!」
その指示に従い、大樹ウザイナーがブラック達へと向かって行く。
「ブラック!」
「ホワイト!」
「ルミナス!!」
空中から、ブルームとイーグレットが三人の名前を叫んだ。
二人がブラック達の下へ助けに向かおうとした時だった。
ブラックが手を突き出し、二人を制止した。
「大丈夫!」
「ここは私達に任せて」
「お二人は他のウザイナーをお願いします!」
そう言って空中にいるブルームとイーグレットを見上げた。
三人の目には力が戻っていた。
その輝きを感じ取ったブルームとイーグレットが笑顔で応える。
「うん!!」
ベストコンディションとは言えないまでも、精霊の力によって蘇ったブラックとホワイトのコンビネーションが、ウザイナーを圧倒する。
力勝負では、まだウザイナーに敵わないブラックとホワイトだったが、ブルームとイーグレットの存在が彼女達の精神的な支えとなっていた。
蘇ったブラック、ホワイト、ルミナス、そして新たなるプリキュア、キュアブルーム、キュアイーグレットによって、ウザイナーが一体、
また一体と浄化されていく。
そして遂に、カレハーンの下に残ったのは、ブラック達の力を吸い取った樹木ウザイナーのみとなった。
流石のカレハーンにも、表情に焦りの色が浮かんでいた。
だが。
「調子に乗るなぁああああ!!」
今の不利を打ち消そうとするかの様なカレハーンの叫びだった。
そう叫ぶと同時に飛び上がり、樹木ウザイナーの上に乗ると、身体をウザイナーと一体化させたのだった。
「合体したの!?」
「このカレハーン様の真の力、見せてやる!!」
そう言って、ウザイナーの胴体から滅びの力を纏った大量の枯葉をプリキュア達に向けて吐き出した。
プリキュア達は、その攻撃を寸前で避ける。
その時、攻撃を空中へ避けたホワイトとイーグレットがウザイナーの右腕の付け根から僅かに漏れ出ている光に気付いた。
「ブラック!ルミナス!」
「ブルーム!」
ホワイトとイーグレットの意図に気付いたブラック、ルミナス、そしてブルームが頷いた。
そして、着地したホワイト、イーグレットと共に、プリキュア達はウザイナーに対して、Vの字に並ぶ陣形を取った。
先頭がルミナス、その後ろにブラックとホワイト、そしてVの字の頂点にブルームとイーグレットが並んだ。
「何のつもりだ…っ!何をやろうが、全てを枯れさせる滅びの力に逆らう事は、不可能だっ!」
カレハーンと一体化したウザイナーから滅びの力が広がっていく。
だが、プリキュア達はそれに動じる様子はない。
「カレハーン…。確かにアンタは強い…。…でもね!」
ブラックの言葉にホワイト、そしてブルーム達が続く。
「私達は絶対に!」
「諦めない!!!!!」
逆にカレハーンに対して啖呵を切った。
「貴様らぁあああ!!!」
逆上したカレハーンがプリキュア達に向かって突進してきた。
雄叫びを上げながら迫りくるカレハーンに、まずはルミナスが対峙する。
「プリキュアを助けるポポ!」
ルミナスの腰に付けているタッチコミューンからポルンの声が響いた。
ルミナスが頷く。
「闇の力を押し返すポポ!」
「光の意思よ!私に勇気を!希望と力を!」
その声に応えるかの様に、ルミナスの手にハーティエル・バトンが舞い降りた。
ハート型のバトンがルミナスの起こす回転によってロッドモードに変形する。
ルミナスがハーティエル・バトンを手放すと、それがルミナスの目の前で巨大化し、停止する。
そしてゆっくりと回転しながら、光の軌跡を残した。
「ルミナス!ハーティエル・アンクション!」
ルミナスが、その声と共に両手を前に打ち出すと、それに応えるかの様にハーティエル・バトンから虹色の円が撃ち出された。
「何っ!?」
今までのウザイナーとの戦いの中で、決して攻撃を行わず、守りとサポートに徹していたルミナスからの予想外の攻撃に、カレハーンの反応が遅れた。
ハーティエル・アンクションがウザイナーを直撃する。
「かっ、身体がっ!?」
ウザイナーと一体化したカレハーンは、虹色の光に包まれ、動きを止められた。
しかし。
「プリキュアァアアア!!!この程度の力でぇええ、止めれるかぁああああ!!!」
カレハーンの雄叫びと共に、ウザイナーを包み込んでいた虹色の光が砕け散った。
だが、そんな状況にルミナスやプリキュア達は、顔色を変える事はない。
それどころか、ルミナスの口元には笑みさえ見えた。
その事実に、逆上し、冷静さを失っているカレハーンは気付く事が出来なかった。
ハーティエル・アンクションを打ち破る為に払った、大きな代償を。
「ブラック!ホワイト!今です!」
ルミナスが後ろに退くと、その陰から「スパークル・ブレス」を装着したブラックとホワイトの姿が現れた。
「今度は油断するかぁああ!!」
カレハーンが一体化したウザイナーの右腕をブラックとホワイトへと向けた。
そう、このウザイナーの右腕は、ブラック、ホワイト、ルミナス、渾身の「エキストリーム・ルミナリオ」の力さえ、全て吸い取ってしまったのだ。
しかし、その事を分かっているはずのブラック、ホワイトからは、そんな悲壮感は微塵も感じられない。
それどころか、圧倒的な力を持つ強敵を前に、自信すらも感じ取れた。
ブラックが空に向け、手を掲げる。
「ブラック・サンダー!」
ホワイトがそれに続く。
「ホワイト・サンダー!」
ブラックとホワイトを天空から放たれた雷が打ち抜くと、二人の身体が虹色のオーラに包まれた。
「プリキュアの、美しき魂が!」
「邪悪な心を、打ち砕く!」
「プリキュア・マーブルスクリュー!!」
ブラックとホワイトの突き出した掌から雷が溢れ出すと、その手を振りかざし、歯を食いしばり拳に力を込める。
「マックスーーーーー!!」
その叫びと共に二人が手を突き出すと、その掌から怒涛の雷の渦が放たれた。
「無駄だっ!無駄だぁあああ!!!」
その光の渦が前と同じ様にどんどんウザイナーの右腕に吸い込まれていく。
「くぅううう!!」
ブラックとホワイトが歯を食いしばり、力を放ち続ける。
その気持ちに応えたのか、二人の腕に装着されたスパークル・ブレスからも雷が溢れ出してきた。
「吸い尽くせぇええ!!」
プリキュアが放つ力を吸い込み続けるウザイナー。
しかし。
「スパークッ!!」
その掛け声で、雷は虹色の光の渦へと変化し、ブラックとホワイト自身の身体を踏み止まらせる事の出来ない程の威力となった。
「吸い尽くしてしまぇええ!!!」
その時だった。
プリキュアの力を吸い込み続けていたウザイナーの右腕が徐々に膨れ上がり、右腕の様々な所から光が溢れ出してきた。
そして、遂に。
右腕が弾け飛んだ。
「うっ!?貴様らぁあああああ!!」
ブラックが勝ち誇る。
「どう!?お腹を下した気分は!」
「ブラック…、その表現は、ちょっと…」
「え…?そう…?」
そんなブラックとホワイトの呑気な会話を余所に、ウザイナーの右腕を失ったカレハーンの決死の特攻を仕掛けてきた。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
それに気付いたブラックとホワイトが左右に避けながら。
「ブルーム!」
「イーグレット!」
二人の名前を叫んだ。
ブラックとホワイトの陰から、手を繋ぎ、目を瞑るブルームとイーグレットが姿を現した。
ブルームが前に右手を翳す。
「大地の精霊よ…」
イーグレットが左手を掲げる。
「大空の精霊よ…」
その声は、ブラック、ホワイトの魂の叫びとは全く異なっていた。
まるで子供に語りかけている母親の様な、穏やかで優しい声だった。
その穏やかな声に答える様に大地と大空から溢れだした精霊の光が、二人の掌に集まっていく。
「きれい…」
その精霊の光の美しさにブラック達は目を奪われた。
「今、プリキュアと共に!」
「奇跡の力を解き放て!」
「プリキュア・ツインストリーム!!」
その声と共に突き出した腕を回転させると、ブルームとイーグレットの前に光の円が出来上がった。
「プリキュアァアアアア!!」
狂気を宿したカレハーンと一体化したウザイナーがブルームとイーグレットに迫る。
「スプラーーーーーーーシュ!!」
その声と共に二人が光の円を両腕で打ち抜くと、そこからそれぞれ二色の光の渦が放たれた。
それが交じり合い、螺旋を描きながらウザイナーと一体化したカレハーンを包み込む。
「ウザイナーーー!」
「ギャァアアアアアアア!!!」
カレハーンは、悲鳴を上げながらウザイナーを切り離し、脱出した。
「ウザイ…ッナーーーーー!!」
精霊の光によって浄化されたウザイナーから、囚われていた多数の小さな精霊達が解き放たれた。
精霊達が消え去ると、それまで空を覆っていた暗雲が忽ち消え去り、枯れていた木は蘇り、剥き出しだった大地を緑が覆い尽くした。
大地には花が咲き誇り、空には鳥が戻ってきた。
「やった~!!」
ハイタッチするブラックとブルーム。
「うふふ…」
その様子を見守るホワイトやルミナス、イーグレット達にも笑顔が戻っていた。
その時。
「うぉおおおおおおお!!!」
ウザイナーから脱出したカレハーンが奇襲をしかけてきた。
「!!!!!」
突然の出来事にプリキュア達は防御の姿勢を取るどころか、声さえ上げる事が出来なかった。
プリキュア達の鼻先までカレハーンが迫った時、カレハーンの動きが突如止まった。
カレハーンの身体が足の先、手の先からどんどん枯葉に変わっていく。
ブルームとイーグレットの放った「プリキュア・ツインストリーム・スプラッシュ」は、あの一瞬でカレハーンの滅びの力を浄化していたのだ。
もうカレハーンに力は残されていないはずだった。
だが。
カレハーンをここまでさせるのは、アクダイカーンに対する忠誠か、それとも恐怖なのか。
残されているのが上半身のみとなったカレハーンが、プリキュア達に呪いの言葉を残す。
「おのれプリキュア…っ!だが、ダークフォールの戦士は俺だけではないっ!」
「この後、お前達はダークフォールが誇る六人の戦士と戦う事になるだろう…。滅びの力に逆らった事…後悔するがぃ…い…」
そう言い残し、カレハーンは枯葉へと還っていった。
「ダークフォール…」
「滅びの力…」
ブラックやブルームが未知なる敵に不安の表情を浮かべた時、一陣の風が吹き、元カレハーンだった枯葉が舞い上がった。
その枯葉が徐々に六人の人型を模る。
その姿は、長身の優男、ずんぐりとした体形の大男、グラマスな女性、筋肉質な男、そして、
ブルームとイーグレットと同い年位に見える二人の少女へと変わった。
そして最後に、武者鎧を着た巨人の姿に変わった後、不気味な笑い声にも聞こえる風によって彼方へと消えていった。
闇の力が去った草原には、変身が解かれたなぎさとほのかとひかり、そして新たなるプリキュア、キュアブルームとキュアイーグレットの姿があった。
なぎさとほのか、ひかりは笑顔だった。
新たなる強敵ダークフォールが現れた上、力を失ったなぎさ達は二度とプリキュアに変身出来なくなったというのに。
なぎさ達には確信があったのだ。
この二人なら大丈夫と。
なぎさが無言で右手を差し出す。
その手の上に、ほのかとひかりが右手を乗せた。
そして、三人はブルームとイーグレットに笑顔を向ける。
ブルームとイーグレットは、お互いの顔を見交わした後、照れくさそうに三人の手の上に右手を乗せた。
手を重ねた五人の少女、そして妖精と精霊達は、暗雲の晴れた澄みきった青空を見上げるのだった。
ブルームとイーグレットの身体から精霊の光を放たれると、二人はなぎさ達に手を振りながら、空の彼方へと飛び去っていった。
それに応える様に、なぎさ、ほのか、ひかり、ミップル、メップル、ポルン、ルルンは、自分達の遺志を継ぐ新たなるプリキュア
「キュアブルーム」、「キュアイーグレット」に、いつまでも手を振り続けていた。
キャスト
「ふたりはプリキュア マックスハート」
美墨なぎさ(キュアブラック)/本名陽子
雪城ほのか(キュアホワイト)/ゆかな
九条ひかり(シャイニールミナス)/田中理恵
メップル/関智一
ミップル/矢島晶子
ポルン/池澤春菜
ルルン/谷井あすか
「ふたりはプリキュア スプラッシュ☆スター」
日向咲(キュアブルーム)/樹元オリエ
美翔舞(キュアイーグレット)/榎本温子
フラッピ/山口勝平
チョッピ/松来未祐
カレハーン/千葉一伸
ウザイナー/渡辺英雄
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