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 「咲ちゃんのツイッター奮戦記」




 「宮迫学」は「星野健太」の両親が営む「釣り船 星野屋」の前で呆然としていた。
 宮迫は新しい漫才のネタ合わせをする為に健太の自宅に呼ばれていたのだ。
 それは店頭に貼られていた一枚の張り紙が原因だった。
 その貼り紙にはこう書かれてあった。


 「ツイッターはじめました」


 我に返った宮迫が思わず声を出す。

 「これって、ラーメン屋の『冷やし中華はじめました』とかけてる訳?こんなダジャレじゃ魚だって釣れないよ…。
 って、何貼り紙にツッコんでるんだ、僕は…!」



 翌朝の教室。
 咲と舞が談笑している所に健太が現れた。

 「よ~っ!もう話題になってるみたいだな!俺の始めたフリッター!じゃなくてツイッター!」

 「はあ…。宮迫君から聞いたわよ…」

 健太の寒いギャグに溜め息をつきながら答える咲。

 「そうか、そうか!宮迫を自宅に呼んだ甲斐があったってもんだぜ~」

 「でも星野君、どうして急にツイッターを始める事にしたの?」

 「美翔!よく聞いてくれた!実はな、俺の心の師匠『デーブ・スペクター』がツイッターで、1日10個ダジャレを呟くって聞いてよ!」

 「こ、心の師匠って…」

 呆れ顔の咲だったが、健太は構わず話を続ける。

 「それで俺も師匠に倣ってツイッターを始めようと思った訳よ。師匠が1日10個なら、俺は15個、いや…20個呟くぜ!」

 「そんな寒いツイッター見る人なんかいないわよ!」

 そんな健太に対し、咲が挑発する様に言い放った。

 「何だと!?そう言う咲はツイッターやらないのかよ!?」

 「私は、ぜっ!んぜん!興味なし!」

 咲は両手で罰点のポーズを取り、首を横に振る。
 そんな咲と健太のやり取りを聞いていた舞が声を出した。

 「そう言えば、うちのお兄ちゃんも最近ツイッター始めたの」

 「ええ~!?和也さんが~!?」

 咲が素早く舞の方を振り向いた。

 「うん」

 「和也さん…」

 目をきらきら輝かせて上の空の咲を尻目に、健太が怪訝そうな表情で、舞に聞く。

 「何でまた?」

 「お兄ちゃんの尊敬する宇宙飛行士がツイッターをやってるらしくて、それを見る為だって言ってたわ」

 「和也さんが…」



 その日の放課後、学校の「パソコン室」に咲と担任の「篠原」先生の姿があった。

 「ツイッターのやり方を教えてほしいって?日向、どうしたんだ?急に」

 パソコンを使った授業にあまり積極的でなかった咲の変化に戸惑う篠原。

 「え?いや~、今、話題だし、ちょっと気になるな~って。えへへへへ…」

 何とか理由を誤魔化そうとする咲。


 そんな咲を教室の外から見守る舞の姿があった。

 「咲、急にどうしちゃったのかしら…」

 「大丈夫よ」

 舞の後ろから薫の声が聞こえた。
 舞が振り返ると、そこには満と薫が立っていた。

 「満さん、薫さん」

 「咲ならきっと大丈夫」

 そう言って、満が舞の肩に手を置いた。

 「うん…。何が大丈夫かは分からないけど…」

 舞はそう言うと、再び教室の咲に目を向けるのだった。


 「理由はよく分からんが、パソコンに興味がなかった日向がパソコンに興味を持ってくれた事は、先生嬉しいぞ。早速、始めるとするか」

 「はい!」

 篠原と咲は、担任と生徒というだけでなく、部活でも顧問と部員という関係だった。
 咲は、篠原がツイッターをやっているという話を何度か聞いていたので、思い切って篠原に声をかけたのだった。

 篠原がパソコンを起動させた。

 「日向はツイッターについては知っているのか?」

 「はい!…まあ、なんとなく…ですが…」

 「そうか…。まあ、その辺はこのページを見れば色々書いてある」

 そう言って、パソコンの画面上に「ツイッターナビ」のページを開いた。

 「他に何か分からない事があったら、先生に聞けばいい」

 「はい!」

 「じゃあ、登録を始めるぞ」

 篠原は、そう言うと「ツイッターナビ」のページを閉じ、「ツイッター」の公式ページを開いた。
 そして新規登録ページに移動した。
 そのページで、名前、メールアドレス、パスワード、ユーザー名を入力する。
 パスワードの入力もあるので、篠原は席を咲に譲った。
 咲がパソコン画面の指示に従い入力する。

 「先生、終わりました」

 咲の声で篠原は席に戻り、画面を確認した。

 「うん、問題ない様だな。じゃあ、次だ」

 そう言って、ページを切り替えた。
 そのページはフォローする相手を「スポーツ」や「政治」、「芸能」等のジャンルから選択出来る様になっていた。

 「ここでフォローする相手を決めるんだが、日向は何か興味のあるジャンルはあるか?」

 「え!?興味のあるジャンルですか?え~と…、え~と…」

 篠原に聞かれ戸惑う咲。

 「じゃあ取り合えず、先生をフォローしてみるか。そうすれば、先生がフォローしている人が見れる様になる。
 それを見てから考えてもいいんじゃないか?」

 「お願いします」

 「分かった」

 篠原が設定作業に入る。
 咲が篠原をフォローする様に設定すると、咲のページに篠原のフォローしている人物の一覧が表示された。
 作業を終えた篠原に促され、咲がパソコン画面を覗き込んだ。

 「この中で気に入ったのがあれば言ってくれ。この『フォローする』のボタンを押せば、日向のパソコンや携帯でも見る事が出来る様になるから」

 「分かりました!え~と…、『うちやえゆか』さんに…、『山口真理』さん…、『清水亜紀』さん…って!先生、芸能人ばっかりじゃないですか!?」

 「べっ、別に関係ないだろ!これはプライベートなツイッターなんだから!必要ないならここは飛ばすぞ!」

 「ああ!待って下さい!じゃあ…、『うちやえゆか』さんと『山口真理』さんと…」

 そう言って咲は、篠原のページから次々とフォローを増やしていった。

 「よし、これで仮登録完了だ。何か呟いてみるか?」

 「え!?呟きですか!?え~と、え~と…」

 「そんなに深く考えるな。今の段階じゃ、誰かに見られる訳じゃない」

 「え~と、じゃあ!『ツイッターはじめました』で!…あれ?どっかで聞いた事がある様な気が…」

 それを聞いて苦笑する篠原。

 「じゃあ、打つぞ」

 そう言って、キーボードを叩いた。

 「あ~、そうだ。日向の携帯に仮登録のメールが来ているか確認してみろ」

 篠原がキーボードを叩きながら言った。
 咲は携帯を取り出して、メールを確認する。

 「来てます!」

 「そのメールに載ってるアドレスをクリックすれば登録完了だ」

 「はい!」

 「よし。じゃあ、一応携帯でツイッターのページを開いて、ログインしてみるんだ」

 「はい。え~っと…。開きました。ログイン、ログインと…」

 篠原に支持された通りに携帯を操作する咲。

 「あっ!オッケーです。うわ~、これがツイッターか~」

 そこには先程ツイートした芸能人の呟きが幾つも表示されていた。
 それを眺めていた咲に疑問が浮かんだ。

 「先生、この『返信・詳細』って何ですか?」

 篠原の表情が困り顔に変わった。

 「あ~、それか~。う~ん…、今の日向に説明するのは難しいな…。
 取り合えず、1週間は見るだけにしろ。1週間あればツイッターの雰囲気も分かると思うから」

 「え~!?見るだけですか~?」

 咲の反応見た篠原がパソコンで別ページを開いた。
 それは某有名掲示板の纏めサイトだった。

 「日向、これを見ろ」

 咲がパソコンの画面を覗く。

 「へ~。篠原先生、こういうサイトも見るんですね」

 「ばっ、バカ!たまたまだ!そんな事より、ここを見ろ」

 そう言われ、そのページの掲示板の記事に目を通す咲。

 「え~と、これってツイッターの書き込みですよね?…え!?これって…、告白にしか見えないんですけど…」

 「ああ…。ある有名人宛てにファンが送った呟きだ」

 「それが、掲示板に晒されているんですか!?」

 「そうだ…。本人は個人宛に送ったつもりだろうが、知らなかったのか、間違ったのか、オープンな状態でアップされてしまった。

 ツイッターは手軽で便利な物だが、中途半端な知識でやると、こういう事態にもなるという事だ」

 「はい…。分かりました…」

 素直に反省する咲の肩に篠原が手を置いた。

 「そんな顔するな!先生は日向の事が心配なだけだ。いつも言ってるだろう?最後に勝つのは足の速いウサギじゃないんだぞ」

 「…はい!」

 「よし!じゃあ、この後は先生のお勧めのK-POPのサイトについてだが…」

 「え…?いや…、あの~。私、K-POPには興味ないんですけど…」

 「まあ、そう言うな。このグループなんだが、このボーカルが先生のお気に入りでな。それにこの…」

 「ううう…」

 篠原のK-POP話は、この後1時間に及んだという…。




 キャスト

 日向咲
/樹元オリエ

 美翔舞
/榎本温子

 霧生満
/渕崎ゆり子

 霧生薫
/岡村明美

 篠原先生/氷青

 
星野健太/竹内順子

 宮迫学/入野自由





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