「裏・映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」
ここは「映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」の撮影現場のスタジオ。
そのスタジオの一角にある部屋のドアに「プリキュア様ご一同」と書かれた貼り紙があった。
その部屋は撮影待ちをするプリキュア達の為に用意された楽屋だった。
楽屋の中には「美墨なぎさ」を始めとするプリキュア達の姿があった。
今日は映画のクライマックスシーンの撮影という事もあり、楽屋には出演するプリキュア全員が集まり、出番を待っていた。
今作から加入の「スイートプリキュア♪」の「北条響」、「南野奏」を入れると21人の大所帯で、楽屋はギュウギュウ詰めだった。
だが、殆どのメンバーが同じ中学生であり、「映画プリキュアオールスターズDX」シリーズも今作で3作目という事もあって、
楽屋の雰囲気は和気あいあいとしていた。
作品を超えたグループが出来上がり、中学生らしい他愛のない話で盛り上がっている。
そんな中、なぎさが声を上げた。
なぎさ「プリキュアも『スイート』で遂に8作目か~」
ひかり「凄いですね。なぎささん」
響・奏「あはははは…」
遠慮がちに笑う響と奏。
なぎさ「でも、やっぱり私達の『マックスハート』が一番よね!」
その会話にのぞみが加わる。
のぞみ「え~?私達の『5GoGo!』が一番だよ!ねえ、りんちゃん!?」
りん「え!?」
くるみ「当たり前でしょ」
のぞみの急な振りに、りんが戸惑った瞬間、くるみが即答した。
それにえりかも加わる。
えりか「何言ってんだか。私達『ハートキャッチ』が一番に決まってるじゃない!ゆりさんからも言ってやって下さいよ」
ゆり「当然だわ」
ゆりが読んでいる本から目を離さないまま、クールに答えた。
ラブ「ちょっと、ちょっと~、『フレッシュ』も忘れちゃ困るよ~」
ラブまでもが、その会話に加わってきた。
「スイートプリキュア♪」の二人は、新番組だけあって、なかなかこの手の会話には加われない。
それと同じ様に、その会話に入れない二人がいた。
「ふたりはプリキュア スプラッシュスター」の咲と舞だった。
咲が思い切って、その会話に加わる。
咲「わ、私達だって、ま、負けてないわよ。ね、ねえ、舞!?」
そう言って舞に振る。
舞「え!?そ、そうね…」
舞が咲の発言にあわてながらも同意した。
しかし、咲と舞の言葉で、楽屋に微妙な空気が流れた。
うらら「じゃあ、自分達の作品の凄いと思う所を挙げていきませんか!?」
そんな空気を全く読んでないうららが声を上げた。
かれん「そ、そうね。それでお互いの作品の相互理解を深める事で、この映画作りにプラスになるかも知れないわね」
かれんが、その場を何とか取り繕った。
のぞみ「はい!はい!じゃあ、私から!」
うららと同じく、空気の読めてないのぞみが、そう言って手を上げた。
のぞみ「なんたって、私達の作品には6人のプリキュアが登場!」
のぞみ「しかも、二年間も放送したし、プリキュアナンバーワンは『5GoGo!』に、けって~い!」
なぎさ「ちょっと待った~!」
なぎさがそれに反論する。
なぎさ「二年続いたのは私達『マックスハート』も同じじゃない!それに私達が記念すべき第一作目だし!」
なぎさ「私達がいたからこそ、プリキュアがここまで続いたのよ。だったら、一作目の私達が一番って事にならない?ねえ、ほのか!?」
そう言って、ほのかに振った。
ほのか「確かにそうね。私達が切り開いた道が、ここまで繋がったって事には間違いないわね」
ほのかはにこやかに答えた。
せつな「道って言えば、私達『フレッシュ』も負けてないわ」
せつなも負けじと声を上げる。
祈里「うん!」
美希「そうね。今までのプリキュアシリーズに縛られない新しい形を生み出したのは、私達の作品だものね。私達、完璧」
そう言って美希がポーズを決めた。
えりか「何言ってんだか。プリキュアナンバーワンは私達『ハートキャッチ』に決まってるでしょ!なんてったって、あたしが主役やってるんだから!」
一同「え…!?」
ゆり「はぁ…」
楽屋のプリキュア達がえりかの一言に戸惑い、ゆりからは溜め息が漏れた。
つぼみ「えりかが『ハートチャッチ』の主役だったんですか…!?」
えりか「当たり前じゃない!あたし以外に主役は務まらないでしょ!」
一同「…」
いつき「ははは…は…」
そんな中、相変わらず発言権のない響と奏。
響・奏「…」
そして同じ様に黙っている咲と舞。
咲・舞「…」
楽屋の隅で目立たない様に座っている咲と舞の様子を心配したのぞみとラブが二人に声を掛ける。
のぞみ「どうしたの咲、舞。なんか元気ないね」
咲「え?う、ううん…」
ラブ「ねえ、ねえ!『スプラッシュスター』は何かないの?」
舞「え、え~と…、やっぱり夕凪のきれいな風景かな…?」
えりか「は~!?それってプリキュアと関係ないじゃない!」
しどろもどろに答える舞に、えりかの素早いツッコミが入った。
咲「あ!DXシリーズで唯一の通常モードでの2パターンの変身が出来る事かな!」
それまで表情が曇り気味だった咲が明るい表情で答えた。
うらら「あ~!二年目で使う予定だったやつですね!二年目がなくなったから、急遽し…」
りん「あは!あはははは…」
りんが急いでうららの口を塞ぎ、愛想笑いをしてごまかした。
うらら「?」
一同「…」
ゆり「はぁ…」
再び楽屋に微妙な空気が流れた。
なぎさ「え、映画と言えば、私達の第一作目にはあの『工藤静香』さんがゲストに出てくれたんだよね!ねえ、ひかり!」
話題を逸らそうと、なぎさがひかりに話を振った。
ひかり「そ、そうですね」
ほのか「二作目の時に行った雪山のスキーも楽しかったわね」
なぎさ「スノボーには苦戦したけどね…」
かれん「私達の行った『鏡の国』も楽しかったわね」
こまち「そうね。あんなドレスを着る機会なんて、なかなかないものね」
のぞみ「それなら、『デザート王国』だよ!あのワッフル!」
りん「あのお団子!」
うらら「そしてアイスクリーム!」
のぞみ「しかも!」
のぞみ・りん・うらら「いくら食べても太らな~い!!!」
のぞみ、りん、うららがミュージカルの演技っぽく演じてみせた。
ラブ「それなら私達の『おもちゃの国』も凄いよ!」
それにラブ達も加わる。
祈里「変身シーンにはオーケストラの生演奏が追加!」
美希「完璧な私達の映画にはピッタリの演出ね」
せつな「エンディングの子供達とのダンスも盛り上がったしね」
そんな中、えりかが不敵な笑みを浮かべる。
えりか「ふふふふふ…、あたし達の映画はプリキュア初の海外進出!しかも舞台はあの花の都、そしてファッションの街」
つぼみ・えりか・いつき「パリ!!!」
つぼみ「パリは楽しかったです」
いつき「そうだね」
うらら「そう言えば、スプラッシュスターの映画の舞台はどちらだったんですか?」
再び楽屋の隅に座って目立たない様にしていた咲と舞に、うららが話しかけた。
咲「え…!?私達は…。ねぇ?」
舞「え!?う、うん…」
うらら「やっぱり、自然をテーマにした作品ですから、自然豊かな場所が舞台になったんでしょうね!」
うらら「なぎささん達が雪山でしたから、やっぱり南の島ですかね!?」
咲・舞「あはははは…」
引きつり笑いを返す咲と舞。
のぞみ「海と言えば!かれんさんの別荘…!楽しかったな~!」
うらら「高原の別荘も素敵でした!」
かれん「そ、そう…?」
勝手に盛り上がるのぞみとうらら。
咲「いや…、私達は…」
ラブ「ねえ!何処!何処!?」
咲「(あうあうあう…)」
舞「(ううううう…)」
咲と舞の顔を嫌な汗が次々と流れていく。
咲「(町内の…カラオケ大会…)」
咲が小声で答えた。
のぞみ「何?何?」
咲と舞に詰め寄るラブとのぞみ。
舞「町内の…カラオケ大会…」
舞が小さな声で答えた。
一同「…」
その舞の言葉に楽屋が静まり返った。
その直後。
一同「ええええええ~!!!!」
美希「信じられない…!」
そう言って美希がオーバーなリアクションを取る。
いつき「え、映画の舞台が…」
つぼみ「町内のカラオケ大会…ですか?」
かれん「オーケストラのコンサートの間違いじゃないの?」
なぎさ「ぶっちゃけ、ありえな~い!」
一同「あははははは…!!!!」
楽屋の中が爆笑に包まれた。
ほのか「なぎさ、笑いすぎよ」
そう言うほのかも笑っていた。
咲・舞「あは、あはは…」
咲と舞は苦笑いするしかなかった。
舞「(は、恥ずかしい…)」
咲「(う~!だ、誰か…)」
咲・舞「(助けて~!!)」
その時だった。
楽屋のドアが突然開いた。
そのドアの向こうから溢れる光の中に二人のシルエットが浮かび上がる。
そこには二人の少女が立っていた。
咲・舞「ああっ…!!」
その姿を見た咲と舞の瞳に薄らと涙が浮かぶ。
咲「満…!」
舞「薫さん…!」
それは満と薫の姿だった。
くるみ「ちょっと貴女達!ここはプリキュアの楽屋よ!」
ひかり「何かご用ですか?」
満「声が聞こえたから…」
薫「咲と舞…」
満・薫「二人の声が聞こえたから来た」
その満と薫の前にせつなが立ちはだかった。
せつな「貴女達はエキストラでしょ?エキストラはスタジオの外で待機のはずよ」
薫「黙れ、ムキムキマン」
薫の言葉にプリキュア達の一部のメンバーが反応する。
ゆり「(ムキムキマン!)」
りん「(ムキムキマン!)」
こまち「(ムキムキマン…!)」
祈里「(ムキムキマン…!)」
奏「(ムキムキマン…!?)」
ほのか「(ムキムキマン…!?)」
かれん「(ムキムキマン…!?)」
いつき「(ムキムキマン…!?)」
せつな「し、失礼ね!」
それに動揺するせつな。
その他のメンバー「???」
薫の言葉にプリキュア達のリアクションが分かれた。
せつなに対し、満が更に追い打ちをかける。
満「それに貴女のセリフの数…、私達と変わらないじゃない」
せつな「うっ…」
薫と満の続けざまの言葉に立ちくらみを起こすせつな。
祈里「せつなちゃん!」
それを祈里が支えた。
美希「ちょっと、貴女達言い過ぎよ!」
薫「お前は『キン肉マン』の世界に帰れ。完璧(パーフェクト)超人」
美希「な、何よ、それ!」
えりか「そうよ!あんた達はモブキャラらしく、外で主役のあたし達を待ってればいいのよ!」
えりかが、そう言って満と薫を指差し、ポーズを決めた。
それに対し、満が余裕の笑みを浮かべ返した。
満「そう言う貴女達もさっさと『MAHO堂』に帰りなさい」
えりか「は?」
満の言葉に、きょとんとするえりか。
満「貴女達の事よ」
薫「どれみ、あいこ、はづき、おんぷ」
そう言って薫が、つぼみ、えりか、いつき、ゆりを指差した。
ゆり「ちょっと待ちなさい!私を宍戸キャラと同じにしないで!」
今まで常に冷静な態度を取っていたゆりが、突然立ち上がって叫んだ。
響「(うううう…)」
ゆりの言葉に響が苦虫を潰した様な表情をした。
奏「響?」
つぼみ「よ、よく分かりませんが、ゆりさんも落ち着いて下さい!」
いつき「そうです!」
そう言って、つぼみといつきがゆりを必死に引き留めた。
こまち「そうよ、みんな落ち着きましょ。満さん、薫さんも」
満「あ、そう言えば前から言いたかったんだけど、貴女達の合体必殺技…、何だっけ?」
満が思い出した様に尋ねた。
うらら「『プリキュア・レインボー・ローズ・エクスプロージョン』ですね!」
相変わらず空気の読めていないうららが笑顔で答えた。
満「あ~、それ。あれって気持ち悪いのよね。あれに似たのって、何かのゲームで見た気がするのよ。薫、何だっけ?」
薫「パックンフラワー」
満「あ~、それそれ」
りん「って、『スーパーマリオ』!?」
くるみ「失礼ね!」
そう言って、くるみが机を叩き、立ち上がった。
なぎさ「まあ、まあ!こんな所で暴れたって、何にもならないんだから。この鬱憤は映画で晴らせばいいんだし!ね!ね!」
そう言って、先輩プリキュアとして、この場を何とか必死に収めようとするなぎさ。
満「そうね。貴女達が二年間も好き勝手に大暴れしたせいで、後番組の咲と舞は色々苦労させられたものね。
薫「鼠(ねずみ)先輩」
それをクールに返す満と薫。
なぎさ「あは…!あはははは…!」
そう笑ったなぎさの身体は震え、こめかみには血管が浮き上がり、鼻の穴は膨れ上がり、握った拳に力が入る。
ほのか「な、なぎさ…?」
咲「(あわわわわ…)」
舞「(もうダメ…)」
ガクガクと震えながら抱き合う咲と舞。
満と薫の数々の言動で楽屋の中は一発触発の状態だった。
その時、満と薫の後ろの開いたドアを誰かがノックした。
そこから二人の男性が顔を出す。
文尾「皆さん、お待たせしました~!本番入ります~!」
それは、この映画のAD(アシスタントディレクター)をやっている文尾(ブンビー)と、監督である大塚氏の姿だった。
二人がプリキュアの楽屋の中に入ってくる。
舞「か、監督…!」
正に助け舟となった監督達の登場に瞳を潤ませる舞。
大塚「ん?どうかしましたか?」
咲「な、何でもないんです!ね!ね!」
咲がその場を必死に取り繕おうと右往左往する。
気付くと満と薫の姿は、そこにはなかった。
大塚「今日の撮影は大ボスとの最後の戦いです。気合入れていきましょう!」
大塚監督の声が楽屋に響いた。
なぎさ「…当然よ!」
美希「気合十分よ!」
ゆり「みんな…行くわよ!」
一同「おお!!!」
そう言って、21人のプリキュアは楽屋を後にした。
その姿を見送る文尾と大塚監督。
文尾「いや~。撮影も終盤なのに、皆さん気合入ってますね~。何かあったんですかねぇ?」
大塚「さあ…?よく分からないけど…。でも…、いいシーンが撮れそうな気がしてきたよ」
「裏・映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」完
キャスト
「スイートプリキュア♪」
北条響/小清水亜美
南野奏/折笠冨美子
「ハートキャッチプリキュア!」
花咲つぼみ/水樹奈々
来海えりか/水沢史絵
明堂院いつき/桑島法子
月影ゆり/久川綾
「フレッシュプリキュア!」
桃園ラブ/沖佳苗
蒼乃美希/喜多村英梨
山吹祈里/中川亜紀子
東せつな/小松由佳
「Yes!プリキュア5GoGo!」
夢原のぞみ/三瓶由布子
夏木りん/竹内順子
春日野うらら/伊瀬茉莉也
秋元こまち/永野愛
水無月かれん/前田愛
美々野くるみ/仙台エリ
文尾(ブンビー)/高木渉
「ふたりはプリキュア スプラッシュ☆スター」
日向咲/樹元オリエ
美翔舞/榎本温子
霧生満/渕崎ゆり子
霧生薫/岡村明美
「ふたりはプリキュア マックスハート」
美墨なぎさ/本名陽子
雪城ほのか/ゆかな
九条ひかり/田中理恵
特別出演
大塚監督/大塚隆史
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