「プリキュアの野望」本能寺の変(全3話)
第1話「本能寺へ」
キャスト
織田信長:日向 咲
森蘭丸:美翔 舞
徳川家康:桃園 ラブ
明智光秀:ナージャ・アップルフィールド
羽柴秀吉(第1話には未登場):夢原 のぞみ
足利尊氏(本編には未登場):美墨 なぎさ
あらすじ
「足利尊氏」が開府したプリキュア幕府も二期に渡る放映により衰退(視聴率・玩具の売上げ低下)の一途を辿っていた。
その頃、スプラッシュスター国「織田信長」は、兵力的に圧倒的優位にあった牙-KIBA-国「今川義元」を桶狭間の戦い(朝8時30分枠)で破る。
その後、天運さえも味方につけ、各チャンネルの大名が派閥を争っていた日曜朝のアニメ枠の視聴率の大半を支配。
信長の日曜朝のアニメ枠の統一は目の前と思われていた。
咲「絶好調ナリ~♪」
長年、織田信長を苦しめていた視聴者からの「アクションが派手過ぎる」、「子供が怖がる」といったクレーム(「Wikipedia」より)を
抑え込む事に成功し、信長の居城「PANPAKAパン」では、盟友「徳川家康」を招き、宴が催されていた。
その宴には信長の重臣も数多く参加していた。
ラブ「キャプテン!あ、いや、織田殿!これで天下布武は叶ったも同然ですな!」
咲「いやいや、徳川殿にはこれからも、まだまだ働いていただきますぞ!アハハハハ…!」
長年、織田家を悩ませていた難題の解決という事もあり、宴が盛り上がる中、信長も上機嫌だった。
ナージャ「我々も骨を折った甲斐がありました」
宴に参列していた信長の重臣の一人「明智光秀」の発した言葉だった。
その言葉を聞いた途端、信長の表情が一変した。
それまでの笑顔が消え、眉間に皺が寄り、口元がへの字口に歪む。
しかし、その変化に気付いたのは、信長の小姓である「森蘭丸」一人だけだった。
信長が傍に控えていた蘭丸に手を伸ばすと、蘭丸は膝の上に乗せていた「ムープ」と「フープ」の内、ムープを差し出した。
ムープ「月の力!」
その声と共に「プリキュア・スパイラル・リング」が信長の腰に巻き付いた。
信長は立ち上がると、光秀の席に向かった。
咲「貴様、今何と言った」
ナージャ「は?」
自分の前に立った信長に気付いた光秀が答える間もなく、信長は光秀を蹴り飛ばした。
咲「貴様が何をしたと言うのだ!!グッズの在庫を大量に作っただけではないか!!!」
そう言って、光秀を何度も足蹴にする。
ナージャ「申し訳ございませぬ!申し訳ございませぬ!」
光秀は信長に足蹴にされながらも、必死に許しを請うた。
宴の席にいる誰もが、その姿を押し黙って見続ける事しか出来なかった。
信長に意見出来る者など、信長の配下には一人もいなかったのだ。
それを見兼ねた家康が助け船を出した。
ラブ「キャプテン!いや、織田殿、今日はめでたい席。ここは、この家康に免じて許していただきたい」
家康に窘められ、信長の光秀への折檻の手が止まった。
咲「フン…!キンカ頭めが…!」
ナージャ「申し訳ございませぬ!申し訳ございませぬ!」
信長が家康に促され、席に戻った後も光秀は床板に額を擦りつけ、謝り続けていた。
その出来事から一週間後、光秀は信長に呼び出された。
信長の傍には小姓の蘭丸が常に控えている。
ナージャ「上様、今日はどの様なご用件でしょうか?」
咲「これを見よ。禿鼠(羽柴秀吉)がワシに救援を求めてきよった」
ナージャ「羽柴殿が…」
信長から差し出された書状を受け取った光秀が、その書状に目を通す。
咲「光秀。今直ぐ、禿鼠への援軍を整えよ。整い次第、禿鼠の下へ向かえ。ワシも後に続く」
その言葉に光秀の顔色が変わった。
ナージャ「この私(わたくし)に羽柴殿の下に付けと申されるのですか!?」
今は信長の配下にいるとはいえ、テレ朝の日曜朝8時30分の主役(「明日のナージャ」主役)を務めた事もある光秀にとって、
他チャンネルでしか主役(「交響詩篇エウレカセブン」主役)をやった事のない秀吉の下に付く事は、屈辱的な事だった。
咲「不満か?」
信長の鋭い眼光が光秀を貫く。
ナージャ「い、いえ…」
咲「この出兵の後(のち)、貴様の領地を召し上げる。その代わり、フジテレビの日曜朝9時枠を与えよう」
ナージャ「上様!お待ち下さい!
フジテレビの日曜朝9時の時間枠と言えば、『金色のガッシュベル!!』の時間帯ではありませんか!」
咲「そうだ…。奪い取ればいいのだ…。ダンデライオン一座の為、死ぬ気で働けよ」
そう言って、信長は蘭丸と共に光秀の前から立ち去った。
信長がいなくなった後も、光秀はその場から動く事が出来なかった。
その身体は震えていた。
それは、信長に対する恐怖心からか、それとも、今頭の中を過った事に対する武者震いだったのか。
第2話「本能寺の変」に続く
第2話「本能寺の変」
キャスト
織田信長:日向 咲
森蘭丸:美翔 舞
森坊丸:霧生 満
森力丸:霧生 薫
明智光秀:ナージャ・アップルフィールド
斎藤利三:ローズマリー
羽柴秀吉(第2話には未登場):夢原 のぞみ
あらすじ
天下布武の号令の元、日曜朝のアニメ枠統一を目指すスプラッシュスター国「織田信長」。
信長の家臣「明智光秀」は、同じ家臣である「羽柴秀吉」の救援として、秀吉の下に付く様に命じれ、領地さえ没収される。
これを機に、光秀はプリキュア史に残る大事件を引き起こす事となる。
「明智光秀」は主君「織田信長」から「羽柴秀吉」救援の命を受け、1万3000の手勢を揃えた。
その夕刻、秀吉救援に向かう為、城を出立した。
日が変わった未明、国境まで軍を勧めた明智軍の光秀の乗った馬が足を止めた。
光秀の重臣「斎藤利三」が光秀の横に馬を付ける。
ローズマリー「殿…」
光秀は利三の言葉に頷いた。
ローズマリー「行軍を止めぇい!」
利三の発した号令に1万3000の歩みが止まる。
ローズマリー「殿のお言葉である!」
馬上の光秀に1万3000の兵の目が集まった。
光秀は、腰から「ナージャバトン」を抜き、天高く掲げた。
ナージャ「今こそ、この光秀…、天下を変える!天下布武と唱え、日曜朝のアニメ枠を安寧に導く戦(いくさ)と言いながら、
帝(鷲尾プロデューサー)をも自らの下に置こうとする所業、許し難し!天に変わり、この明智日向守光秀が成敗いたす!」
ナージャ「皆の者…」
兵の誰もが息を呑む。
光秀がナージャバトンを都にある本能寺の方向に向けた。
ナージャ「敵は本能寺にあり!」
1万3000の明智軍の兵から雄叫びが上がった。
光秀は「斎藤利三」配下の3000の兵を引き連れ、本能寺へ向け、踵を返した。
プリキュア史に残る大クーデター「本能寺の変」の始まりである。
信長の姿は都での拠点「本能寺」の床の中にあった。
信長の支配下にある都では、信長の警備は小姓を中心とする軽装の供回りに任されていた。
その手勢は僅か100程だった。
まだ日が明けぬ早朝。
咲「ろくじはんになったらめざましなるからだいじょうふだっていってるれひょう…!」
馬の嘶きや物音に気付いた信長が目を覚ました。
咲「蘭丸はおるか」
舞「はっ!ここに」
隣の部屋で控えていた小姓「森蘭丸」が姿を見せた。
咲「何の音だ」
舞「はっ!見て参ります」
蘭丸が様子を見に行こうとした時だった。
同じ小姓の「森坊丸」と「森力丸」が信長の部屋へと駆け込んできた。
満「お屋形様!兵が押し寄せております!」
血相を変えて話す坊丸に対し、信長は顔色一つ変えずに問い返す。
咲「如何なる者の企てだ」
薫「桔梗の紋…!明智勢と見受けられまする…!」
もう一人の小姓力丸の言葉だった。
咲「光秀…か…」
舞「如何いたしましょう!」
流石の蘭丸にも焦りの色が見える。
しかし、この絶体絶命の中、信長は先程から顔色一つ変えないままだ。
それはまるで、この事態を予測していた様にも見受けられた。
だが、それは間違いだった。
謀反の首謀者が光秀と分かった時点で、信長にはこの後起こうるであろう出来事が全て見通せていたのだった。
信長の落ち着き払った様子に、蘭丸がしびれを切らし、思わず声を発する。
舞「お屋形様!ここはお引き下さい!」
蘭丸のその言葉に信長の口元が緩む。
咲「あの光秀の事…、抜かりはあるまい」
舞「では…!?」
蘭丸を始め、三人の小姓が信長の言葉を待つ中、信長は小袖の襟を正した。
そして立ち上がり、こう言い放った。
咲「是非に及ばず」
信長は3000の明智軍が押し寄せる中、少数の手勢で迎え撃つ。
咲「蘭丸!」
舞「はっ!」
信長と蘭丸が手を繋ぎ、「ミックス・コミューン」を構えた。
咲・舞「デュアル・スピリチュアル・パワー!!」
精霊の光が信長と蘭丸を包み込む。
咲「花開け、大地に!」
舞「羽ばたけ、空に!」
プリキュアに変身した信長と蘭丸が舞い降りる。
咲「輝く金の花、キュアブルーム!」
舞「煌めく銀の翼、キュアイーグレット!」
咲・舞「ふたりはプリキュア!!」
舞「聖なる泉を汚す者よ!」
咲「阿漕な真似は、お止めなさい!」
信長と蘭丸は「プリキュア」に変身し、明智軍に応戦するが、多勢に無勢。
徐々に追い詰められていった。
咲「坊丸、力丸はおるか!」
満・薫「はっ!ここに!」
小姓の坊丸と力丸も「ムープ」と「フープ」の力を借りて変身し、明智軍の兵と戦っていた。
咲「力丸は、女、子供を逃せ!光秀もメインの視聴者である女、子供には手を出すまい」
薫「はっ!」
薫「(みのりちゃん…)」
咲「坊丸は館に火を放て」
満「…はっ!」
舞「お屋形様…!」
蘭丸は信長を真っ直ぐ見つめ、言葉を待つ。
咲「蘭丸はワシについて参れ…」
舞「はっ!」
満「月の光よ!はあぁっ!」
力丸の放った火が本能寺を包み込む。
信長と蘭丸は館の奥に向かっていた。
咲「良いか…。『スプラッシュ・コミューン』、『チャーム・ペンケース』、一つもこの世(在庫)に残すな…」
舞「…」
舞「承ります…」
信長と蘭丸は館の中央の部屋の前へと辿りついた。
そして、信長が部屋の中へ入ろうとした時だった。
舞「お屋形様…」
信長が蘭丸の言葉に振り返る。
咲「ん…?」
舞「無念にございまする…」
そう言った蘭丸の瞳は涙で溢れていた。
信長がその涙に満面の笑みで返す。
咲「一期50話、下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり…。楽しき人生であったわ…」
信長と蘭丸の姿は炎の中へと消えていった。
「ふたりはプリキュア スプラッシュスター」全49話を駆け抜けた二人の人生だった。
最終話「信長亡き後の世」に続く
最終話「信長亡き後の世」
キャスト
徳川家康:桃園 ラブ
穴山信君:東 せつな
鳥居元忠(回想):蒼乃美希
平岩親吉(回想):山吹祈里
羽柴秀吉:夢原 のぞみ
羽柴秀長:春日野 うらら
黒田孝高:水無月 かれん
織田信長(回想):日向 咲
明智光秀(最終話には未登場):ナージャ・アップルフィールド
南光坊天海(本編には未登場):北条 響
あらすじ
天下布武の号令の元、日曜朝のアニメ枠統一を目指したスプラッシュスター国「織田信長」は家臣「明智光秀」に「本能寺」にて討たれる。
「織田信長」、一期49話を駆け抜けた人生だった。
その報は、「徳川家康」、そして「羽柴秀吉」の下にも伝わったのだった。
「本能寺の変」は、都にいる「織田信長」の下に向かっていた「徳川家康」にも届いた。
ラブ「キャプテン…!いや…、信長公が…!」
「明智光秀、謀反」の急報を受け、家康は涙を流し、その場にへたり込み咽び泣いた。
家康の家臣の誰もが、その姿に声を掛けられず黙って見守る中、突如家康が立ち上がった。
ラブ「私も信長公の下に参る!」
せつな「いけませぬ!」
それは、家康の重臣「穴山信君(彦六郎)」の声だった。
せつな「国には殿を待つ家臣や民が待っておるのですぞ!」
せつな「この私(わたくし)の命に代えてでも、殿を都に行かせる訳にはいきませぬ!」
そう言って、信君は家康の前に両手を広げ、立ちはだかった。
信君の言葉で、家康の脳裏に国で待っている人々の顔が浮かんだ。
美希「(落ち着いてよ。今のあなたは誰?竹千代じゃない、徳川家康でしょ!?天下太平の世を作るって、あの子と約束したんでしょ?)」
美希「(だったら、戦国大名として今すべき事をして!中途半端は許さないから!)」
祈里「(殿は信長様の事が大好きなんでしょ?だったらその気持ちはいつかきっと信長様にも伝わるはず)」
祈里「(私、信じてる)」
ラブ「(美希たん…、ブッキー…)」
家康は都のある北東の空を見つめた。
その快晴の空に信長の笑顔が浮かんだ。
咲「(ドンマイ、ドンマイ!)」
ラブ「(キャプテン…、いや、信長公…)」
ラブ「…彦六郎」
家康は北東の空を見たまま、信君に呼びかけた。
せつな「はっ!」
ラブ「帰るぞ…!」
そう言って振り向いた家康の目には、既に迷いはなかった。
せつな「ははっ!」
家康は信君らと共に、家臣や民の待つ故郷フレッシュプリキュア!国へ向けて、踵を返したのであった。
かれん「殿!」
フジテレビ「金色のガッシュベル!!」の城の一つを水攻めにしていた「羽柴秀吉」の陣中に、
秀吉の重臣で軍師でもある「黒田孝高」が駆け込んできた。
その手には書状らしき物が握られている。
のぞみ「ほうはひはは(どうかしたか)?」
秀吉は、弟の「羽柴秀長」と共に食事の途中であった。
二人の口の中は、食べ物で埋め尽くされている。
慌てた様子の孝高を気に留める事もなく、二人はそのまま食事を続けていた。
かれん「これをお読み下さい…!」
孝高は二人の態度に呆れながらも、書状を秀吉に差し出した。
その書状に目を通した秀吉が、口いっぱいに頬張っていた食べ物を丸飲みにし、身体を震わせ立ち上がった。
うらら「はにひゃ(兄者)…?」
その秀吉の様子に、秀長の箸も止まった。
のぞみ「上様が…っ!殿が…っ!!」
秀吉は、その動揺を隠そうともせず、震えた手で書状を握り締めたまま、孝高に尋ねる。
のぞみ「この書状は本物か…!?明智殿が…、明智殿が…謀反など…」
かれん「間違いありませぬ…。この筆跡、この印は間違いなく、明智様本人のもの…」
かれん「それに、都におられる上様に兵を向ける事が出来る者は…」
のぞみ「殿…、とのぉぉぉぉぉぉお!!」
秀吉は誰に憚る事もなく、咽び泣いた。
うらら「兄者…」
それを見守っていた孝高が秀吉に声を掛ける。
かれん「殿…、上様の死を悲しんでいる暇はありません…。これは機にございます」
のぞみ「機…?」
かれん「はい…。今、都にいる明智軍に兵を向けられるのは、おそらく我が軍のみ…」
かれん「上様の弔い合戦を制すれば、『スプラッシュスター』の後番組に一番近いのは…」
咽び泣いていた秀吉が顔を上げる。
のぞみ「まさか、明智殿は『明日のナージャ』の二期目を…!」
かれん「帝(鷲尾プロデューサー)に取り入ろうとする者に唆されたという事も考えられます…」
のぞみ「次の…プリキュア…」
その秀吉の目に既に涙はなく、ただその先を見つめていた。
のぞみ「講和…、講和の準備だ…!」
うらら「兄者…!」
かれん「はっ!」
のぞみ「逆臣、明智光秀を討つぞ~!けって~い!」
うらら・かれん「ははっ!!」
その後、秀吉は光秀との戦いに勝利し、信長の有力な後継者となった。
しかし、戦いには勝利したものの、秀吉は光秀を捕らえる事は出来なかった。
歴史上では光秀は、この戦いの後、落ち武者狩りによって討ち取られたとされている。
秀吉は、朝廷より「豊臣」の氏を賜り、「ふたりはプリキュア スプラッシュスター」の後番組「Yes!プリキュア5」が始まった。
その栄華は二期にも及び、「Yes!プリキュア5 GoGo!」へと繋がっていった。
豊臣家の栄華は永遠に続くものと思われていたが、一大ブランドとなった「プリキュア」への視聴者の目は厳しくなっていた。
絶大な権力を握っていた秀吉の死後、台頭したのが「徳川家康」だった。
家康は、豊臣側との天下分け目の合戦を制し、新番組「フレッシュプリキュア!」が始まった。
その頃には、光秀を裏で操っていたと噂された帝(鷲尾プロデューサー)も退位(降板)していた。
秀吉亡き後の豊臣家の没落を見ていた家康は、様々な改革を行った。
家康が行った主な改革は以下のものが挙げられる。
・プリキュアは一期で終了
・新しいプリキュアの途中加入
・映画を「映画プリキュアオールスターズDX」と「現行のプリキュア映画」の年2作品上映
これらの改革により、「フレッシュプリキュア!」から「ハートキャッチプリキュア!」への政権移譲は争いもなく、平和裏に行われた。
誰もが臨んでいた安寧の世が訪れた瞬間だった。
これら家康が行った改革には「南光坊天海」と名乗る僧侶が深く関わっていた。
その天海に会った者が口を揃えて言う言葉がある。
「天海様の声は明智光秀にそっくりだ」と。
その天海こそ、秀吉が捕らえる事の出来なかった光秀ではないかという噂が流れたが、その真相は明らかになっていない。
そして時代は、「プリキュア」シリーズ8作目となる「スイートプリキュア♪」を迎えたのだった。
「プリキュアの野望 スプラッシュ☆スター版」本能寺の変 完
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